欧州におけるT+2決済:アジアでの準備は?
Abstract
欧州市場の証券決済期間がT+3からT+2に変更されました。ここで注意すべきなのは、欧州で証券取引を行っているアジア太平洋地域の市場参加者も決済期間短縮への対応を余儀なくされ、これに違反すれば罰金を科せられる点です。
KEY RESEARCH QUESTIONS | |
1 | 欧州市場におけるT+2決済の採用は、アジア太平洋の市場参加者にどのような影響を及ぼすか? |
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欧州での決済期間の短縮は、アジア太平洋の金融機関の取引後処理サイクルにどのような影響を及ぼすか? |
3 | アジア太平洋の金融機関にはどのようなシステムおよび業務体制の強化が必要か? |
欧州におけるT+2決済の採用は当局主導による最新プロジェクトであり、細分化された欧州市場の取引のしくみをより効率化することを目的にしています。本レポートは、セレントがOmgeoの協力を得て行った調査の結果をまとめたもので、決済期間の短縮がアジア太平洋地域の証券会社や投資家に及ぼす影響を分析しています。
今回の調査ではアジア太平洋の30を超える投資運用会社、証券会社/ディーラー、カストディアンを対象に、欧州でT+2決済が採用されたことへの対応状況について聞きました。その結果、大部分の金融機関は欧州発行証券のT+2決済に対応するため、既に業務プロセスやシステムの刷新を進めていることがわかりました。STP対応のミドルオフィス業務を実践している金融機関や、ドイツなど既にT+2決済を採用している市場で取引を行っている金融機関でも、欧州のT+2決済に合わせてテクノロジーやプロセスの強化を迫られています。
欧州との時差の関係で、アジア太平洋の市場参加者は欧州勢に比べてはるかに短い期間内での取引後処理を強いられ、取引件数が特に多い金融機関の場合、取引後処理の自動化が不可欠となっています。
「欧州におけるT+2決済は、この決済サイクルが世界標準になる日への予行演習といえるでしょう。アジア太平洋の市場参加者の対応は、アジアが将来の業務課題に対処できる効率的で柔軟なプロセスやシステムを備えているか否かを占う試金石となるでしょう」と、セレントのアジアにおけるシニア・バイス・プレジデントでレポートを執筆したニール・カタコフは述べています。
レポートでは、欧州のT+2決済がアジア太平洋の金融機関のシステム、業務体制、取引戦略にどのような影響を及ぼしているかを分析し、T+2決済に対応するためのシステム更新などIT投資の規模、アジアの金融機関が欧州の株式市場で取引する際に直面する課題への対応策を示しています。