エンタープライズ・リスクおよびガバナンスをめぐるトレンド、ベンダーおよび市場の展望
Abstract
セレントの予測では、ガバナンス、オペレーショナル・リスクおよびコンプライアンス関連のIT投資額は世界全体で2008年の140億米ドル(約1,3兆円)から2011年には170億米ドル(約1,6兆円)、年平均で6.6%増加するとみられます。
金融危機は銀行業界や資本市場に深刻な打撃を与えましたが、ここにきて変革に向けたビジネスチャンスが生まれています。信用危機が発生する以前、リスクマネジャーは既に確定したリスクを認識することはできても、新たに発生しつつあるリスクや連動するリスクについては必ずしも把握できていませんでした。リスク管理の枠組みが、個々のリスクに別々に対応するか、縦割りのビジネスごとにリスクに対処するかに限られていたからです。また、オペレーショナル・リスクの管理は理論上、ビジネスを運営する3つの要素(人、プロセスおよびテクノロジー)が連携して機能するものですが、実際には取引、管理およびその他のリスク管理メカニズムの間の連携が極めて脆弱で、有効に機能しているとは言えませんでした。そのため、全社的なリスクが著しく見落とされる結果となり、業務部門ごとに固有のものと複数の業務部門にまたがるリスクの関係性を見落としていました。
金融機関は現在?とりあえずの対策としてリスクソリューションを導入するか?将来を見据えて持続可能な変革を行うか―の決断に迫られています。前者を選択するケースはますます減っているようです。投資家、規制当局および顧客は、自社がいかにリスク管理の対策を行っているかを訴えるだけでなく、実際にそれを実践している金融機関を高く評価するようになっています。同時に、その実現に失敗した金融機関に課せられるペナルティーはより厳しく、コストも嵩むようになっています。
業界変革という新しい局面に突入するなか、ガバナンスとオペレーショナル・リスクは経営陣が厳しくチェックすべき問題です。金融機関がリスクエクスポージャーを軽減するためには、今やGRC(ガバナンス、リスク管理、コンプライアンス)、ERM(全社的リスク管理)およびORM(オペレーショナルリスク管理)の連携が不可欠となっています。一方、より成熟度と柔軟性の高い次世代のベンダーソリューションの登場により、金融機関は自社開発ツールを代替/統合する「既製の」ソリューションを購入できるようにもなっています。また、これらのソリューションは細かな設定が可能な上、「リスクとコンプライアンス」を一元化するアプローチをとっているため、システムのカスタマイズ化やリスクの再評価、審査およびリスク管理業務のコストを抑えることが可能です。
オペレーショナル・リスクおよびガバナンス関連のソリューションはなお統合の勢いが衰えていないため、今後もさらに市場再編が進むでしょう。
「現在問題となっているのは『拡大するか撤退するか』というテーマです。金融機関とベンダーは、ソリューションの購入か自社開発かのいずれかの決断を迫られています。エンドユーザーの需要はますます高度化しており、これに対応するためには大幅な投資が必要になっています。規制、業界採用標準、また、設定しているリスクと管理のバランスは各組織によって様々なので、ニーズも多様化しています」」とセレントのシニアアナリストでレポートを執筆したキュビラス・ディンは述べています。
レポートは、オペレーショナル・リスクおよびガバナンスの業務慣行、ソリューション市場における最新の需給状況、それがベンダーと金融機関にもたらす影響について最新で詳細な調査と分析を行っています。また、ガバナンス、オペレーショナル・リスクおよびコンプライアンス分野におけるIT投資の予測、ソリューション戦略、そこから得られる教訓や提言などを特にテクノロジーとデータの観点から示しています。
本レポートは19の図表を含む全40ページで構成されています。