2023年 北米のコーポレートバンキングにおけるITの優先事項と戦略
2023/09/01
コンプライアンスとレガシーで硬直化した状況を、アジリティと顧客重視で克服する
Abstract
世界経済は新型コロナのパンデミックによる影響とそれに伴う景気悪化や銀行業界の問題を切り抜けてきた。こうした中、コーポレートバンキングのIT支出は大きく増加し続けている。金利上昇の中で銀行の利ざやは圧迫されており、米国の地方銀行は、短期的な危機だけでなく、今後予想される潜在的な影響にも対応しなければならない。
また銀行は、フィンテックや先駆的な銀行によって新しいバリュープロポジションやサービスが構築される中、絶えず変化するテクノロジー環境にも直面しており、さらにこうした状況は新たな規制の導入につながる可能性もある。そのため、銀行は規制強化への懸念に対処する一方で、これらの新しいエコシステムにどのように関与すべきかを決め、企業顧客を獲得・維持するための新たな方法を見出す必要性に迫られている。
コーポレートバンキング業界の戦略的および商品レベルのテクノロジー優先事項を明らかにするために、セレントは再びテクノロジーのインサイトと戦略に関する調査を実施した。セレントは世界のコーポレートバンキング業界のシニアエグゼクティブ214名からインサイトと見解を収集し、今後1年間の上位のIT優先事項、および最も大きな変化が予想される商品とプロセスについて詳細な情報を得た。本レポートでは、北米 (米国とカナダ) のコーポレートバンキングのエグゼクティブ39名からの回答を分析した。
主な調査結果:
- 北米地域における銀行のIT支出は加速度的に増加し続けている (ただし、一部では明確な差異が見られる)。セレントの最新のデータによると、2023年のコーポレートバンキングのIT支出は平均で4.6%増加し、2024年にはさらに5.8%増加する見通しである。これらは世界平均を上回っている。ただし、カナダの銀行は世界平均、地域平均、米国内の平均を大きく下回っている。
- 調査に参加した北米の銀行の69%が「フィンテックの脅威が増している」と回答した。これは懸念すべき状況であり、しかも、新しいバンキングエコシステムに関与するための戦略を用意していると回答した銀行は56%にとどまっていた。これは世界平均を18%下回っており、まだ関与していない銀行がこの市場トレンドによって困難に直面する可能性があることを示唆している。
- 北米地域でIT支出の上位3位までの項目は、コンプライアンス要件と規制要件への対応、スピードとアジリティの向上、およびレガシープラットフォームの入れ替え/最新化という課題への対応であった。
- テクノロジーの優先事項は、AIの急速な台頭に大きく影響されているようだ。「インテリジェントバンキング」を追求する動きが広がる中、高度なアナリティクス、AI、MLが特に重視されて優先事項の上位であったほか、データプラットフォーム基盤の改善という重要なステップも優先事項となっている。
- 事業と商品の優先事項のランキングでは明らかな傾向が見られ、世界全体と北米地域の両方で企業向けデジタルチャネルが最上位であった。どのような商品・サービスであれ、顧客にとって重要なのはバンキングエクスペリエンスである。