Abstract
法人向けモバイルデポジットサービスを適切に位置付け、価格設定できれば、米国の中小企業のうち少なくとも400万社がこのサービスを導入するとみられます。本レポートではそのための方法を提案します。
KEY RESEARCH QUESTIONS | |
1 | 米中小企業の間でRDC(リモート・デポジット・キャプチャー)の導入はどれほど進んでいるか。 |
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中小企業は法人向けモバイルデポジットのどのような特性に関心を持っているか? |
3 | 法人向けモバイルデポジットにはどのようなビジネス機会があるか? |
本レポートは米中小企業を対象に2016年6月に行った調査を分析し、銀行がリモートデポジットキャプチャー(RDC)への投資リターンを最大化するため方策を探ります。
米金融機関にとって、中小企業市場は収益性の高い重要な顧客セグメントとして注目を集める存在になっています。また、コストの嵩む支店での取引をセルフサービスチャネルに移行する動きも広がりつつあります。法人向けモバイルデポジットが登場し、2015年に広く導入されるようになったことで、銀行はこれらの「一石二鳥」を実現できるまたとない機会となっていますが、課題となる点もあります。
- 中小企業市場は多様で、法人向けモバイルデポジットとの親和性は企業によって大きく異なる。中小企業の共感を得られる価値提案に沿った独自の商品と位置付けを考える必要がある。
- 銀行はこれまで中小企業に無料サービスをアピールしてきた。従って、中小企業の多くは法人向けモバイルデポジットに関しても、無料または極めて低価格のサービスを期待している。
- 多くの中小企業は既にデスクトップデポジット(法人向けRDCとも呼ばれる)を導入している。従って銀行は、法人向けモバイルデポジットを投入することで既存の収入減を奪われないよう慎重に事を進めるべきだろう。
今回の調査では、米企業では小切手の受け入れがなお一般的であるものの、大部分の中小企業ではさほど多くの小切手を受け入れていない実態が明らかになりました。過去の経緯をみると、RDC導入は小切手利用を前提としたもので、小切手の取扱件数が多くなるほど企業がデスクトップRDCを導入する可能性は高くなることを示しています。一方、今はデスクトップRDCよりmRDC(数年前に投入された)を導入するケースが増えており、それが広く普及しています。これは、米金融機関にとってリスクであると同時にビジネスチャンスにもなるといえるでしょう。
「中小企業の間では、引き続きRDCが主流となっています。手数料ベースの収入拡大や、支店からトランザクションバンキングへの大々的な移行に向けたビジネスチャンスが広がっています。銀行にとっては絶好の機会があるにもかかわらず、その獲得に向けた積極的な動きはまだ見られません」とセレント銀行プラクティスのシニア・アナリストでレポートを執筆したボブ・メーラは述べています。
レポートではまず法人向けモバイルデポジットの定義を示し、米国の中小企業市場における小切手の受け入れ状況、預金をめぐる行動、商品の利用状況について取り上げています。さらに、調査に参加した中小企業の法人向けモバイルデポジットに対する反応を分析し、中小企業の顧客に法人向けモバイルデポジットサービスを提供中、あるいは提供を検討している金融機関向けに、ビジネスチャンスの評価と提言を示しています。