上海・香港ストックコネクト:ここからが本番
2016/03/29
フア・ジャン
Abstract
上海・香港ストックコネクトが始動し、海外の投資家は初めて中国本土のA株を直接売買することが可能になりました。しかし、それを阻む複数の要因も見受けられます。
KEY RESEARCH QUESTIONS | |
1 | 上海・香港ストックコネクトは中国の資本勘定の開放に向けてどんな意味を持つか? |
2 |
ストックコネクトの利用にあたっての障壁とは? |
3 | ストックコネクトとその関連プロジェクトの今後の進展は? |
2014年11月に始動した上海・香港ストックコネクトは、香港と上海の証券所の間の双方向取引を可能にするものです。10年前に最初に提案が示されてから、中国本土の株式を直接売買することを求めてきた海外の投資家はその実現を待ち望んできました。
しかし、ストックコネクトには数々の制限や運営上の課題があり、それによって取引戦略が制約される、業務が複雑化する、リスクが発生するといった事態が起こりかねません。具体的な問題点は以下のとおりです。
- 決済サイクルの違い
- デイ・トレーディングの禁止と空売りの制限
- 人民元決済の義務化
- 資産の代替可能性の問題
- 株主リスクと報告
「中国の資本市場を海外の投資家に向けて段階的に開放する過程において、ストックコネクトはほんの第一歩にすぎません。今後は売買量の上限引き上げ、中国の他の資産クラスや取引所への適用拡大、取引ルールのグローバル化、そして最終的にはローレイテンシーの高度な取引戦略への対応の実現が不可欠になるでしょう」と、アジア金融サービスグループのシニア・バイス・プレジデントでレポートを執筆したニール・カタコフは述べています。
レポートでは上海・香港ストックコネクトの概要を明らかにし、その独自の取引モデルが抱える運営上の課題を検証するほか、ストックコネクトのような双方向市場に関するプロジェクトの可能性について考察します。