米国における債券取引自動化へのハードル
Abstract
電子取引の普及とマルチアセット戦略の拡大に伴い、債券市場でアルゴリズム取引が広まるとの観測が強まっています。しかし、先行する現物株式や外国為替市場と異なり、債券市場には固有の問題があるため、取引の自動化が遅れています。
セレントの最新レポート「米国における債券取引自動化へのハードル」は、米国の債券市場を取り上げています。金融危機以降は取引の内訳に変化がみられ、モーゲージ関連証券など一部商品の発行残高や売買高はシェアを落としましたが、予想通りの展開といえるでしょう。また、金融危機は売買高全体にも打撃を与え、2009年の市場売買高は5年ぶりの低水準を記録しました。しかし2010年には回復に転じ、現在は債券市場全体が底上げされています。
2007年以降、国債の売買高は急拡大しています。一方、安全への逃避の結果、マネーマーケット商品や連邦政府機関証券の売買高は減っています。企業の債務残高が急増するなか、モーゲージ関連証券の売買高も頭打ちとなっています。
「債券商品のアルゴリズム取引には様々なハードルがあるため、2~3年以内に取引が活発化することはないでしょう。特に、アルゴリズム取引を行うには価格が流動的で、妥当な気配値が提示されることが絶対条件ですが、債券市場はこれらを満たしていません」と、セレントのシニアアナリストでレポートを執筆したアンシュマン・ジャスワルは述べています。
レポートでは、米債券市場における電子取引の進化の状況を明らかにしています。様々な債券商品をめぐる最新動向や、債券ディーラー間取引市場における電子取引の割合についても取り上げています。また、債券に即したかたちでアルゴリズム取引を定義し、その発展状況を検証しています。さらに、アルゴリズム取引の実現に向けたハードルの数々にも触れています。