英国リテール証券市場:アクティブトレーダー獲得が鍵
Abstract
英国のリテール市場では個人投資家自身がポートフォリオを運用する動きが、かつてないほど広がっています。新たな金融商品や販売チャネルへのニーズが拡大し、リテール証券市場の競争関係は再構築されつつあります。
2000年から2003年にかけての株式市場の低迷は、英国の預金および投資カルチャーに長期的な影響を与えました。その結果、ここ7年間で株式やミューチュアル・ファンドへの直接投資が減る一方、保険や預金残高が増加しています。株式市場の強化に向けた取り組みも、多くの個人投資家を市場に呼び込むことにはつながりませんでした。一方、同国の投資商品の中では新商品とはいえない差額決済契約(CFD)が最も急成長を遂げています。CFDは株式デリバティブ商品の1つで、これを売買することで現物株の値動きに応じた利益を得ることができ、しかもレバレッジ効果や印紙税の免除が適用されます。昨今の市場混乱に伴う株価の下落や利益の減少をヘッジするための取引として同商品の利用が広がり、個人投資家によるCFD取引量は着実に増加しています。
こうした動きの要因として、英国におけるアクティブトレーダーの増加が挙げられます。国内の個人投資家全体に占める割合はごくわずかですが(2007年末時点で4~6%)、彼らは取引先証券会社のオンライン取引を頻繁に利用し、オンライン取引全体に占める割合は極めて高くなっています。セレントが英国のアクティブトレーダーの行動と特性を調査したところ、彼らは欧州の他の国のアクティブトレーダーに比べて新たな投資先や商品を求める傾向が強いことがわかりました。同セグメントのうち45%の投資家が常に新たな商品を探しています。従って、英国の証券会社は優遇価格、投資家教育、専用コールセンターによるサポートなどを通じてアクティブ・トレーダーの囲い込みを積極的に進め、収益性の高い同セグメントのシェア確保に努めています。
セレントの最新レポート「英国リテール証券市場:アクティブトレーダーの獲得が鍵」は、以下のような観点から英国リテール投資市場の現在の構造と動向を明らかにしていきます。
- 英国の個人投資家は①リスク選好度②取引頻度③投資判断の自律度によってどのように分類されるか。
- 収益性の高いアクティブ・トレーダー・セグメントの投資判断に影響を与える行動や特性とはどのようなものか。
- 英国の個人投資家はどのタイプの商品を選好するか。競争上のポジションはどのように変化しているか。
- 競争上のポジションの変化に対応するため、既存プレイヤーと新規参入プレイヤーはどのような戦略をとっているか。
「英国のリテール証券市場は2008年に調整局面を迎えるとみられますが、CFDの市況は明るい見通しです。株価が急変動する局面や株価の下落局面では、投資家は引き続きCFDを投資の避難先とみなすでしょう。英国の証券業界の再編はさらに進み、MiFIDの施行により、証券取引を店内化(顧客の委託注文に対して自ら向かうもの、internalize)できる規模を持つ銀行はコスト削減を達成し、競争上の優位に立つとみられます」とセレント証券プラクティスのアナリストでレポートの共同執筆者のイザベル・シャウエルテは述べています。
本レポートは28図と3表を含む39ページで構成されています。