2023年 アジア太平洋地域のコーポレートバンキングにおけるITの優先事項と戦略
2023/09/01
プロセスオートメーション、AI、デジタルエクスペリエンスを活用してバンキング商品に変革をもたらす
Abstract
世界経済は新型コロナの大流行の影響とそれに続く経済の悪化や銀行業界の難局を切り抜けた中、コーポレートバンキング部門のIT支出は力強い伸びを続けている。しかし、アジア太平洋地域では国によってIT予算の傾向に明らかな違いがある。同地域には、すでに確立したバンキングインフラ (およびそれに見合ったテクノロジー) を持つ成熟した先進国市場がある一方で、国境を越えたリアルタイム決済システムの統合によって可能になった経済の急成長と成長重視の政策という優位性を持つ東南アジア諸国もある。
コーポレートバンキング業界の戦略上および商品レベルのIT優先事項を明らかにするために、セレントは再びITのインサイトと戦略に関する調査を実施した。セレントは世界のコーポレートバンキング業界のシニアエグゼクティブ214名からインサイトと見解を収集し、今後1年間のIT最優先事項および最も大きな変化が予想される商品とプロセスについて詳細な情報を得た。本レポートでは、アジア太平洋地域のコーポレートバンキングのエグゼクティブ46名からの回答を分析した。
主な調査結果:
- アジア太平洋地域の銀行のIT予算は、日本とシンガポールを除く先進国市場では、地域平均 (4.1%) と世界平均 (4.4%) を上回るペースで増加している。日本とシンガポールのIT予算の伸びは、地域平均と世界平均のいずれも下回っている (ただし、シンガポールの今年と来年の伸びは日本を上回る見通し) 。 IT予算の伸びを主導しているのはインド、香港、オーストラリアで、これらの国の銀行のIT予算は2024年に向けて拡大する見通しである。
- アジア太平洋地域の銀行は「銀行の変革」に向けた取り組みに予算の51%を投じている。この分野への予算配分の割合が50%を超えているのは同地域のみである。小規模な銀行は、「銀行の運営」コストの割合が高い大手銀行に比べ、成長のために配分される予算の割合が大きい。
- スピードとアジリティの向上は優先事項の上位に入っているが、先進国市場の既存の大手銀行では、コンプライアンス、効率性、コスト削減の取り組みが突出している。これらの銀行は、複数の国における複雑な業務、規制、支援技術に関する負担が大きく、小回りの利く小規模な銀行に比べて「銀行の変革」に向けた取り組みに配分する予算の割合が最大で6%小さくなる見通しである。
- 世界的なトレンドと同様に、商品のイノベーションと、市場投入のアジリティとスピードは広く浸透しているテーマだが、大手銀行や成熟市場では、コンプライアンスやコスト削減を優先せざるを得ない状況にある。
- ブロックチェーンは、特に貿易サービスの取り組みを支援する上で、依然として重要性が高い。アジア太平洋地域の銀行の74%がブロックチェーンに投資し、その導入と収益創出に成功したと回答している。
- 事業と商品の優先事項の順位では明らかな傾向が見られ、46%の銀行で貿易サービスとサプライチェーンファイナンスが上位3位以内に入っている。