ドッド・フランク法がデリバティブ市場に及ぼす影響
Abstract
ドッド・フランク・ウォール街改革法および消費者保護法(ドッド・フランク法)は、今後数年間に段階的に施行される重要法案です。同法は広範囲に影響を及ぼすとみられ、金融業界にとっては1933年に制定されたグラス・スティーガル法と並ぶ重要性を持つといえるでしょう。
セレントの最新レポート「ドッド・フランク法がデリバティブ市場に及ぼす影響:変化の兆し」は、同法がデリバティブ市場と主な市場参加者に及ぼす影響について論じています。既に、規制機構やデリバティブ業界をリードする投資銀行の組織には多くの変化が見られます。本レポートは、現時点で同法が及ぼしている影響と今後の動向について分析しています。
下表は、ドッド・フランク法の各項目の大まかな施行スケジュールを示しています。同法の施行(2010年7月21日)から3ヶ月以内に金融安定監督評議会(FSOC)を設置、12ヵ月以内にデリバティブおよび決済ルールを施行、さらに18ヶ月以内にボルカー・ルールを制定することが決まっています。従って、同法がもたらす変化についても、向こう2年間をいくつかの段階に分けて考えていきます。
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施行時期 |
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影響を受ける者 |
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3ヶ月以内 |
金融安定監督評議会 |
全ての企業 |
6ヵ月以内 |
報酬およびゴールデン・パラシュートに関する株主の発言権 |
全ての金融機関 |
9ヵ月以内 |
“Skin in the game”(自己資金を自らの会社・ファンドなどに投入すること)のリスク留保 |
証券化を手掛ける銀行 |
中小企業を不当なインターチェンジ手数料から保護 |
リテールおよび商業銀行 |
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全ての金融機関 |
貯蓄金融機関監督庁の廃止 |
持ち株会社および貯蓄金融機関 |
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デリバティブ清算機関およびスワップディーラーに関する規制 |
投資銀行、清算機関、スワップ取引を行う金融機関 |
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投資アドバイザーの登録義務 |
バイサイドの金融機関および消費者 |
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独立した報酬委員会の設置 |
全ての企業 |
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金融調査局(OFR)の設置 |
全ての企業 |
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投資家保護局(OIA)の設置 |
企業および消費者 |
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投資銀行、ヘッジファンド、プライベートエクイティを手掛ける金融機関 |
大手金融機関の負債シェアの制限 |
大手金融機関 |
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自己資本比率の引き上げ / 最低負債比率およびリスクに基づく必要資本 |
投資銀行を中心とする金融機関 |
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「リビング・ウィル」の義務化 |
「大きすぎてつぶせない」とされる銀行 |
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送金エラー処理の基準策定 |
リテールおよび商業銀行、消費者 |
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貸金業者および消費者 |
条件付資本(Cotingent Capital)レポートおよびルール策定 |
相互依存している大手金融機関 |
出典:セレント
「ドッド・フランク法は、今後10年間とそれ以降の規制の枠組みを定めることを目的としています。金融業界の持続的な復活のためには、デリバティブ業界の運営方法の根本的な改革が不可欠でしょう」と、セレントのシニアアナリストでレポートを執筆したアンシュマン・ジャスワルは述べています。
このレポートは3図を含む24ページで構成されています。