キャピタルマーケッツのユーティリティ・ソリューション:オペレーション再構築に向けて
Abstract
収益の伸び悩みや規制強化に直面する金融機関にとって、冴えないレベルにあるROEを押し上げるにはコスト削減が不可欠となっています。短期的な措置をとるだけではなく、共通サービスや業界共通のユーティリティを利用した根本的なオペレーショから再構築に取り組むことで長期的なコスト削減が可能になるでしょう。
KEY RESEARCH QUESTIONS | |
1 | キャピタルマーケッツにおけるユーティリティ・モデルの促進要因は? |
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ユーティリティ・ソリューションのメリットとは? |
3 | ユーティリティ・モデルを導入する際の課題とは? |
本レポートは、資本市場で導入が広がりつつあるユーティリティおよび共有サービスモデルについて取り上げています。従来、キャピタルマーケッツに参加している金融機関はオペレーションは社内で行うか、サービスプロバイダーにアウトソーシングしてきましたが、非中核業務や差別化が求められないミドル/バックオフィスの業務を中心に非効率化や重複を招く結果となっています。ユーティリティおよび共有サービスモデルを導入すると、こうした業務の多くを一括してプロバイダーに委託することができ、プロバイダー側は複数の金融機関にマルチテナントベースでサービスを提供することでスケールメリットとコスト削減を実現できます。
そのメリットは非常に大きいものがあります。グループまたは業界レベルでマルチテナントとコスト共有を実践すれば、大幅なコスト削減につながり、各金融機関は、オペレーショナルコストを変動費に変えることが可能になり、それによって業務を柔軟に縮小・拡大し、新たな市場への参入や新商品の投入をスピードアップできるようになります。また、規制改正の動きを把握し、それに対応可能なソリューションを採用する作業は、個別の金融機関ではなくユーティリティプロバイダーが行う方が効率的です。これらは大幅な資金および人的リソースの開放につながり、その分のリソースを差別化機能や顧客サービスの構築に振り向けることができます。
「キャピタルマーケッツに参加する金融機関には、今後も規制強化およびコスト削減圧力にさらされるとみられます。共有サービスや業界のユーティリティ機能を利用することで、コスト削減、効率性の向上、利益率およびROE(株主資本利益率)向上のカギを握るオペレーション変革を実現できる可能性があります」とセレント証券プラクティスのアナリストでレポートを執筆したアリン・レイは述べています。
セレントは2年前からユーティリティをめぐる動向に注目し、顧客の本人確認(KYC)分野におけるユーティリティ・ソリューションについて取り上げてきました。今回のレポートは、新たに複数のユーティリティ/共有サービス・ソリューションの分析を通じて、オペレーションモデルの進化の状況、ターゲットユーザー、機能の特性、デリバリーモデルについても明らかにしています。また、ユーザーにとってのメリット、プロバイダーとユーザーが直面する主な課題を分析し、こうした新たなモデルがキャピタルマーケッツにもたらす可能性を予測しています。