キャピタルマーケットにおけるユーティリティサービスとマネージドサービスの進化
コスト管理からイノベーションへ
セレントは、キャピタルマーケットにおけるユーティリティサービスとマネージドサービスの進化を詳細に追跡してきた。今年発表されたこのトピックに関する最新のレポートでは、コスト削減と業務効率化を求める声は今後も根強く、キャピタルマーケットにおける相互利用型ソリューションのニーズ/導入は拡大するだろうと分析している。ユーティリティサービスはコスト削減/業務効率化の追求における最終目標であり、マネージドサービスはより短期的で斬進的なオプションを企業に提供することにより、特に広範な業務領域でコスト削減/業務効率化を達成できるようにする。なぜならば、企業によって計画におけるニーズ、予算、期間や対処すべきレガシーの課題は異なり、トランスフォーメーションのどの段階にあるかも異なるので、すべての企業がすぐにユーティリティサービスに移行したいと思っているとは限らないからである。
ポイントソリューション向けのユーティリティサービスの需要は高く、導入も増えている。更に、エンド・ツー・エンドの取引後処理のような広範な業務においても、銀行のユーティリティサービスへの関心は徐々に高まっている。そのため銀行はサービスプロバイダーと協力して、ユーティリティモデルの導入を計画している。より広範な領域におけるユーティリティモデルの導入は非常に複雑であり、綿密な計画とより多くのリソースを必要とする。その結果、銀行はユーティリティモデルの導入には慎重な方法を取っている。サプライサイドの力関係の変化や、ソリューションプロバイダーが達成した進化により、ユーティリティモデルの導入は今後加速するとセレントは予測している。
ミッド・バック・オフィスの職務は最も相互利用に適している
相互利用型ソリューションを検討している銀行に特有の課題は、フューチャー・プルーフ(将来における耐性)に関したもの、又は業務の大幅な改善をもたらす可能性がある新しいテクノロジーを容易に統合できるソリューションの導入に関したものである。クラウド、ロボットによるプロセス自動化、AI、ブロックチェーンのような、新しく革新的なテクノロジーの進化により、銀行は、そうしたテクノロジーを活用した成熟したソリューションがあれば導入したいと思っている。注目すべきは、ユーティリティサービス/マネージドサービスのプロバイダー多くは、パイロットテストと概念実証を行い、革新的テクノロジーを彼らのサービスの一部として組み込み、その後そうしたサービスを稼働しているということである。このプロセスは、プロバイダーがテクノロジーのイノベーションを追求する、より安価で、よりリスクの低いオプションを提供している。なぜなら、個々のプロバイダーは、非競争領域のイノベーションに多くのリソース、ナレッジ、ノウハウをつぎ込む可能性は低いからである。
又、ブロックチェーンのような新しいテクノロジーの一部は、ネットワーク効果で成長するので、それらを企業レベルで実証するのは難しい。相互利用型モデルに続いて、新しいテクノロジーを活用したプロジェクトの多くは、業界グループや銀行やサービスプロバイダーの連携により実施されている。イノベーション相互利用のメリットは以下の通り。
•予算が限られている企業では、非競争領域の革新的取組みには通常わずかな金額しか投入しない。従って、同業者間で新しいテクノロジーの開発コストを分かち合うことにより、強力なネットワーク効果が得られる。
•テクノロジーやソリューションに特化したプロバイダーは、銀行よりも新しいテクノロジーを試すのに適した状況にある。特にいくつかのテクノロジーはまだ新しく、実証されていないので、専門的プロバイダーがそれらのリスク評価やレジリエンシーのテストを実施することにより、銀行は新しいテクノロジーを既存のソリューションやフレームワークに組み込む戦略を立てることができる。
•連携した取り組みでリソース、ノウハウ、知識を共有することにより、イノベーションを促進することができる。失敗した場合でも、将来の改善のための貴重な教訓をエコシステムに伝えることができる。
これらの進化は相互利用の気運を更に勢いづけており、今や企業は相互利用を活用して、コストや課題だけでなく、新しいテクノロジーの開発やイノベーションも共有している。「ユーティリティモデルとマネージドサービスの進化:コスト管理からイノベーションへ」というタイトルの我々のレポートでは、いくつかのユーティリティサービスやマネージドサービスのソリューションを分析し、これらの進化の詳細を考察している。