富裕層顧客向けモバイルアプリケーション:欧州市場のケーススタディ
Abstract
ウェルスマネジメントを手がける欧州の資産運用会社は、顧客との接点を広げる手段としてスマートフォンやタブレット向けアプリケーションに注目しています。西欧の資産運用会社によるこうしたアプリケーションの開発はまだ始まったばかりですが、今後は富裕層顧客向けアプリケーションの開発が加速するとみられます。
セレントの最新レポート「富裕層顧客向けモバイルアプリケーション:欧州市場のケーススタディ」はフランス、ドイツ、イタリア、スペイン、スイスおよび英国におけるモバイル用アプリケーションの開発状況を調査しています。これは欧州市場でのモバイル用アプリケーション開発に関するシリーズレポート(全2本)の第1弾で、ウェルスマネジメント顧客向けのアプリケーションについて取り上げています。
ウェルスマネジメントを手がける欧州の資産運用会社は、極めて厳しい事業環境に置かれています。消費者は銀行や運用会社の資産管理能力に対しあまり信頼を置かなくなってきており、一方、当局は商品選択や手数料/報酬の透明性に関する規制を強化しています。さらに、欧州では公的債務問題が発生し、それに伴い銀行の信用格付けの引き下げが相次いでいるほか、ユーロ圏がここ5年以内で2度目の景気後退に突入したことで、金融資産の安全管理をめぐる投資家の懸念が再燃しています。そのため、運用会社にコミュニケーションおよびリスク管理の改善を求める顧客の声がかつてないほど高まっています。
「こうしたニーズに対応するため、運用会社はフロントオフィス・システムを見直し、アドバイザーのワークフローやコミュニケーションの改善に取り組んでいます。こうしたテクノロジーを考える上で、スマートフォンやタブレットは引き続きシステムおよび業務上の重要テーマとなっています。現在のような厳しい環境下にあって、ウェルスマネジメントを手がける運用会社は予算を削減したいところですが、投資家は一貫したポートフォリオのモニタリングや継続的なコミュニケーションを求めており、思うようにコストダウンを進められないとみられます。そのような状況下、モバイルをはじめとするテクノロジーを利用すれば、顧客が口座のパフォーマンスや保有資産を監視できるようになるだけでなく、運用マネジャーとの連絡手段としても有効でしょう」とアナリストでレポートの共同執筆者であるアレキサンダー・カマルゴは述べています。
「我々の調査によると、ウェルスマネジメントを行う運用会社によるモバイル用アプリケーション開発はなお十分に成熟したレベルには達していません。運用会社の多くは、モバイル向けサービスの有無を理由に顧客が金融資産の預け先を変更するとは考えていないため、こうしたアプリケーションの開発にはいまだ着手していません。 しかし、中には顧客がモバイルの必要性を認識してから準備を始めたのでは遅いと気付きはじめた運用会社もあり、ここにきて開発への動きは加速しています。アプリケーションの開発には時間がかかるため、今年第4四半期までに準備を整えるとなれば、今から開発を始める必要があります」とリサーチディレクターでレポートの共同執筆者であるイザベラ・フォンセカは述べています。
本レポートでは、セレントが考える「ウェルスマネジメント用アプリケーション」の満たすべき条件、リテールバンキングや証券会社用アプリケーションとの違いを明らかににし、欧州のウェルスマネジメント市場におけるモバイルの促進要因とトレンドの概要をエンドユーザー向けモバイルアプリケーションに関連付けて解説しています。さらに、上記6ヵ国におけるモバイル、スマートフォンおよびタブレットの普及状況を比較・分析し、個人投資家市場の違いも明らかにしています。各市場の比較分析にあたっては、多数の個人投資家および富裕層顧客を対象に各世帯が保有する金融資産残高を調査しました。
レポートでは上記6ヵ国の市場ごとに、個人投資家市場の主な特徴、ウェルスマネジメント市場の構造、一般投資家および富裕層投資家の拡大見通しなどを詳しく説明しています。また、国ごとの調査結果を分析し、エンドユーザーへのモバイル普及状況に基づいて各市場の成熟度を評価しています。
最後に、近い将来ウェルスマネジメント顧客の間でモバイルが普及するのに伴い、各市場で継続的に見込まれる成長機会について分析しています。