次世代UMA(総合管理口座):カスタマイズ化とスケールメリットの両立
Abstract
ウェルスマネジメント業界にとって、総合管理家計(UMH:Unified Managed Household account)は長年の念願でしたが、テクノロジーや旧態依然とした体制上の問題により、その実現は非常に難しくなっています。スポンサーやベンダーはUMHという非現実的な目標をあきらめ、代わりにより実現の可能性が高い総合管理口座(UMA:Unified Managed Account)に注力すべきと考えます。
KEY RESEARCH QUESTIONS | |
1 | UMAはどのような役割を果たせるか? |
2 |
アドバイザーの役割はどのように変わるのか? |
3 | UMAはどのように進化していくのか? |
本レポートは、UMAが従来の商品志向から脱却して顧客そしてアドバイザーから選ばれるプラットフォームになるために、スポンサーやテクノロジーベンダーは何をなすべきか、また、アドバイザーが金融機関の垣根を超え、流動性のつながりに沿ってリサーチ範囲を拡大し、顧客の資産全体についていかにアドバイスし、いかに収益につなげるかを提案しています。
ここ20年間、富裕層向けのコアソリューションとしてUMAが出現した背景には、ウェルスマネジメント業界の構造的変化、つまり具体的には、業界全体がベンチマークに基づくパフォーマンス重視の姿勢から、目標や成果の実現に注力する方針へとシフトしたことが挙げられます。
こうした後者のアプローチでは、アドバイザーはアセットアロケーションだけではなく、投資計画も担当する必要があります。アドバイザーが効率的に業務を行うためには、テクノロジーを重視し活用し、日常業務よりも戦略的アドバイスの提供を優先させる必要があります。ウェルスマネジメントのエンタープライズプラットフォームの自動化に伴い、アドバイザーの役割も単なる銘柄選択者からストラテジストへと進化しつつありますが、いまだ道半ばです。
アドバイザーが1つのつながりであるとすると、データの接続性はもう1つのつながりといえるでしょう。ウェルスマネジメントは本来、つながりから分離されたところに存在するという性質のため、サイロ型の組織およびシステムの名残が見られ、UMAのスポンサー、運用会社、カストディアンの間の複雑な絡み合いの中にあり、市場の細分化と競争圧力が引き続きウェルスマネジメントの足かせとなっています。
スポンサーとベンダーは、以前からこうした組織上の問題の解決に向けて取り組んできました。利益率の縮小が加速するなか、デジタル化の進んだ、顧客主導への転換への余地の少ない製品しか持たないベンダーはピンチを迎えるでしょう。
「トップダウン方式による商品主導のアプローチを捨て、スケーラビリティの高い自動化の進んだシステムを導入し、カスタマイズした成果追求型のアドバイスを中心に提供できるものが顧客資産の獲得競争での勝者となるでしょう」とセレントのウェルスマネジメントグループのシニアアナリストでレポートを執筆したウィリアム・トラウトは述べています。