2023年 アジア太平洋地域のリテールバンキングにおけるITの優先事項と戦略
2023/10/02
Key research questions
- アジア太平洋地域の銀行はIT戦略を推進する上で何を戦略的優先事項にしているか?
- 商品とITの最重点投資分野は?
- アジア太平洋地域の銀行は、生成AI、クラウド、高度なデータアナリティクスにどの程度注力しているか?
Abstract
2023年のアジア太平洋地域におけるリテールバンクのIT支出は確実に増加している。この成長の背景にある具体的な要因は国や金融機関によって異なるものの、共通するテーマは、商品開発とアジリティ向上を実現する機能への投資が中心となっている。また、オンボーディングなどの主要分野における顧客エクスペリエンスの強化に重点を置く一方で、エンベデッドファイナンスやBaaS (サービスとしての銀行) といった分野におけるビジネスチャンスの活用に努めていることも密接に関係している。
アジリティを重視する傾向は大半の主要市場に共通して見られることから、アジア太平洋地域のリテールバンクがアジリティに重点を置いているのも驚くことではない。金融機関がこの分野の新たな機能に投資している背景には多くの理由があるが、特に重要な理由の1つとして、フィンテック業界の成長によって起きた文化的な変化がある。最近は迅速性と機敏性を高めるという方針を公言する銀行が増えており、大半の銀行はアプローチを適応させる必要があると認識している (実際に、主要銀行はすでに着手している) 。クラウド技術の導入ペースの速さ、AI関連の活動の急増、オープンエコシステム構築プロジェクトへの投資はすべて、銀行の意識が大きく変化していることの現れである。
主な調査結果の一部を以下に示す。
- アジア太平洋地域のリテールバンクの75%が、フィンテックやチャレンジャーバンクによる競争上の脅威が増していると回答。
- 53%が現在のIT戦略の最も重要な3つのドライバーの1つとして、スピードとアジリティの向上を挙げている。
- IT予算は増加している。2023年のIT支出は平均で4.3%増加しており、2024年にIT予算をさらに大幅に増やすことに前向きな姿勢を示している。
- 51%が主な取り組みとしてデジタル口座開設機能の向上に投資している。
- 現時点では、45%が生成AI技術のユースケースを模索している段階だが、25%は2023年または2024年のロードマップに生成AI技術に関連するプロジェクトを組み入れている。
リテールバンク業界へのメッセージは明らかである。アジア太平洋地域全体でIT投資が拡大し、銀行がデジタルオンボーディングや組織のアジリティといった分野で機能の強化を図る中、これらの変化に対応できない銀行は取り残されてしまうリスクがある。