急成長するプライムブローカレッジ ビジネス
Abstract
世界のプライムブローカーの2000~2004年の累積収益は50億米ドル(約5,600億円)に達する見通しです。セレントの予測では、さらに急速な拡大を続け、2005~2009年の5年間の累積収益は115億米ドル(約1兆2,800億円)に上る見通しです。
セレントの最新レポート「急成長するプライムブローカレッジビジネス」は、プライムブローカレッジ業界の主要な市場トレンドについて論じていますが、特にテクノロジーの進歩に注目しています。レポートでは、ファンドマネージャー向け中核ITインフラへの即時アクセスを可能にするテクノロジーを利用しているプライムブローカーのケーススタディを紹介しています。また、プライムブローカーの主要顧客であるヘッジファンドの現在の急拡大ブームも、いずれ落ち着くものと思われますが、このようなマーケットの状況の中でプライムブローカーが乗り越えなくてはならない現在および将来の課題を明らかにしています。
目下の代表的なプライムブローカーはゴールドマン・サックス、モルガン・スタンレー、ベア・スターンズで、3社合計の市場シェアは55~65%に達しています。しかし、ヘッジファンド業界の爆発的な拡大とともに、この状況も変わろうとしています。セレントでは、世界のヘッジファンド資産は今後5年間に年間平均16.5%増のペースで拡大し、2009年には総資産残高が2兆1,000億米ドル(約230兆円)に達すると予測しています。このような急成長に伴い、ヘッジファンドのライフサイクルの全過程においてプライムブローカレッジ・サービスに対する需要は持続するでしょう。
証券業界では、その他にもテクノロジーの進歩、市場構造の変化、一段と複雑化するデリバティブ市場の拡大、銀行統合といった様々な変化を背景に、証券会社の近代化が進み、複合的な資産クラスのサービスが提供されるようになりますが、このような変化も、プライムブローカレッジの革新に拍車をかけるでしょう。その結果、同業界史上初めて、一握りのトップブローカー以外にも変化の波に乗る機会が与えられるでしょう。
プライムブローカーはヘッジファンド向けサービスの拡充を積極的に進めていますが、その多くはファンド管理会社やITプロバイダーはおろか、アウトソーシング業者によるサービスとも重複する可能性があります。投資内容や業務内容からみれば、プライムブローカーのサービスはヘッジファンドに最も密接に対応していると言えますが、ヘッジファンド側は特定のブローカー1社に自らの投資活動すべてを把握されてしまうことには消極的です。ヘッジファンドが拡大する過程では、ファンド管理やオペレーション業務を幅広く自前で行なうケースと、第三者に集中的に業務委託するケースが見られます。
「プライムブローカーは現時点では収益拡大と成長のチャンスを享受していますが、将来については警戒感を持つべきでしょう。現在の成長の裏には落とし穴が潜んでいる可能性があります」 とセレントのアナリストで上記レポートの著者であるデニース・バレンタインは指摘しています。テクノロジー面では、プライムブローカーはバックオフィス、フロントオフィスとも未だ時代遅れのシステムで対処している状態です。ターゲット市場の面では、ヘッジファンドの失敗が発生し、新規ファンドの拡大ペースが減速すると予想されます。バレンタインはまた、コストの増加傾向が続けば、ブローカーが現在の利益率を維持することが難しくなるともつけ加えています。
本レポートは10の図と3つの表を含む全36ページで構成されています。
注)米ドルから日本円の換算ルートは、2004年9月30日の仲値(東京三菱銀行公表による)を参照。