欧州の債券市場:竜巻への備えは?
Abstract
欧州では2009年以降、国債市場とそれ以外の債券市場の既発債残高が全体で11%増加し、2012年3月時点で34兆3,000億ユーロに膨れ上がっています。しかし、いずれの市場も不透明感が高まっているため、既発債の取引は大幅に減少し、取引電子化の動きも減速しつつあります。
セレントの最新レポート「欧州の債券市場:竜巻への備えは?」は、2009年の前回の調査以降、欧州の現物債券市場には様々な変化が見られたと指摘しています。2012年に入ってからの欧州市場における国債の1日当たり平均売買高は520億ユーロ(約5.2兆円)と推計され、2009年の580億ユーロ(約5.8兆円)から10%ほど減少しています。また、国債以外の債券の平均売買高は130億ユーロ(約1.3兆円)と、2009年に比べて48%も少なくなっています。
こうした状況をみると、欧州における債券市場の低迷が今後どれほど続くのかという疑問を抱かずにはいられませんが、市況の改善を見込んだ事業計画を立てることは難しいでしょう。 このような市況においても勝者となるプレーヤーは、考えうるすべてのシナリオに関して5つのプロジェクトを策定し、それぞれについて何をすべきかを確立しています。例えば、流動性が低いままの状態が続いた場合は何をすべきでしょうか。現時点で成功している解決策としては、流動性の統合(個人および機関投資家向け)と流動性の集中(コンソーシアムや入札)などが挙げられます。流動性を創出しているのは、債券市場だけではないからです。
「債券市場の低迷を招いた主因として、欧州の経済危機が深刻化していること、ユーロを取り巻く不透明感が続いていること、世界的に金融システムが不安定になっていることが挙げられます」と、セレント証券グループのシニアバイスプレジデントでレポートの共同執筆者であるアクセル・ピエロンは述べています。
「市場の安定性、安全性および透明性の向上を目的として、様々な規制が既に施行され、さらなる規制案の策定も進んでいます。これらは、欧州の現物債券市場の売買高と潜在的な収益に多大な影響を及ぼすとみられます」とシニアアナリストで共同執筆者のジョセフィン・ドゥ・シャズルネは述べています。
本レポートは、2009年10月発行のレポート「欧州における債券電子取引:危機を乗り切る」の内容をアップデートしたもので、欧州債券市場について定量的に分析しています。
本レポートは29p、32図で構成されています。
注)ユーロから日本円への換算レートは、2011年9月30日の仲値(三菱東京UFJ銀行公表による)を参照。