先進的モバイル決済への投資をためらう理由
Report Previously Published by Oliver Wyman
Abstract
オリバーワイマン既刊レポート
EFMAとオリバー・ワイマンが共同発行したレポートによると、「新たな決済手段をめぐってライバルが攻勢をかけるなか、銀行は『危機感に欠けている』」と評しています。
- 同レポートは、欧州、中東およびアフリカ(EMEA)に拠点を置く148の金融機関とその他の地域の10の金融機関を対象に行った調査に基づいています。
- 新たな決済手段に積極的な投資を行っている銀行は、全体の30%にとどまっています。
多種多様な新しい決済手段が登場しています。オリバー・ワイマンとEFMAが150を超える金融機関を対象に行った調査結果をまとめた最新レポート「先進的モバイル決済への投資をためらう理由」によると、携帯電話などの接続デバイスをはじめ、消費者が日常頻繁に使う様々な機器に資金をあらかじめ充当しておけるようになったことで、代替決済手段が急速に普及しつつあります。
調査した金融機関のうち80%を超える銀行がインターネットによる決済やサービス機能を提供しているほか、モバイル専用サイトを通じてモバイルバンキングサービスを提供している銀行も60%弱を占めています。一方、現在、非接触型のクレジットカードやデビットカードを発行している銀行は30%にとどまり、近距離無線通信(NFC)規格を使った決済を手がけている銀行はさらに少なく20%に満たない状況です。銀行は代替決済手段への投資を増やしており、全体の30%は今後の業務運営のカギを握るこの分野への投資を活発化させていると回答しています。ただ、競合他社の動きに乗り遅れない程度の投資しか行っていない銀行も50%に上っています。銀行以外の新たな競合相手が存在感を強めつつある環境にあって、銀行のこうしたアプローチは万全とはいえないでしょう。
「銀行は、加盟店が新システムの導入に消極的なのは消費者の利用が進まないことを懸念しているからであり、逆にこうした導入の遅れが消費者の利用が広がらない原因にもなっているとみています。新たなライバルが積極的な投資によりシステムとマーケティングの両面でこれらの障害をクリアできるようになれば、銀行にとっては脅威となるでしょう。その結果、顧客の日常的な取引ニーズを満たすために銀行が担うべき役割が弱まり、その過程で得られる貴重な情報を失うことにもなりかねません」と、オリバー・ワイマン決済プラクティスのシニアマネジャーでレポートを執筆したジェームス・シャーウィン-スミスは述べています。
「銀行はもはや決済業務を独占できず、小売業者、携帯電話事業者、IT企業、新興企業とこの分野の市場シェアを争う立場に置かれています。銀行が代替決済への取り組みを強化しない判断を下したとしても、それは戦略的な意図によるものでしょう」とEFMAの事務局長であるパトリック・デスマレは付け加えています。