モバイルバンキングに対するアプローチ:銀行とテクノロジーベンダーにおける相違点
Abstract
米国において、銀行とモバイルテクノロジーベンダーは、時を経て育成される共生関係を築いています。あらゆる関係がそうであるように、両者には共通点と相違点があります。セレントは、モバイルバンキングの行方に関するそれぞれの見解を調査しました。
モバイルバンキングが注目されるようになってから、もう何年も経ちますが、2010年になってようやくバンキングの「5番目のチャネル」としての認知度が高まり、モバイルバンキングはすっかり現実のものとなりつつあります。今年中には、リテール業務を行う米銀トップ50行のほとんどが何らかのかたちでモバイルバンキングを提供するようになり、モバイルバンキングのアクティブユーザーは約1,800万人に達するとみられます。大手金融機関が飽和状態に達した今、銀行業界とモバイルベンダー業界がイノベーションを巡って競い合う動きが加速しています。セレントではこうした状況をより正確に把握するため、銀行11行(1行を除く全てが米銀トップ50行にランクイン)とモバイルバンキングベンダー10社を対象にインタビューを行い、その結果を最新レポート「モバイルバンキングに対するアプローチ:銀行とテクノロジーベンダーにおける相違点」にまとめました。
銀行とベンダーは、両者ともモバイルバンキングの成長性を確信しており、収益性の高いオフライン顧客の獲得にもつながるとみています。また、リアルタイムアラートやP2P(個人間)決済などの一部のフロントエンド機能が近い将来に重要性を増すとの見方もほぼ一致しています。さらに、モバイルバンキングをオンラインバンキングの付属機能ではなく独立したチャネルとして確立するべきであり、バックエンドの勘定系システムとの連携強化が必要であるとしている点でも見解を同じくしています。いずれの業界でも、モバイル関連の手数料収入におけるビジネス機会に期待が集まっています。
「銀行・ベンダーとも、近い将来のモバイルチャネルのマネタイゼーションを予期し、モバイルP2PやRDCによる収益拡大に期待を寄せていますが、既にこれらのサービスを無料で提供する先駆的ソリューションが存在し、両者の思惑と現実には差があります」とセレント銀行グループのシニアアナリストでレポートを執筆したレッド・ギレンは述べています。
出典:セレント
一方、当然ながら銀行とベンダーの姿勢が異なっている点も多くみられました。銀行は複数のチャネル、システムおよび組織を抱えているため、より広範なアプローチをとる傾向があります。これに対し、ベンダーは、モバイルテクノロジーが専門性の高い分野であるため、よりターゲットを絞ったアプローチをとるケースが多いようです。
モバイルバンキング分野の「次の大きな動き」についても、両者の展望には違いが見られました。銀行はモバイルを利用したマーケティングに極めて慎重なアプローチをとっているのに対し、ベンダーはマーケティングツールとしてのモバイルチャネルには非常に高い可能性があると期待しています。また、近距離無線通信(NFC)による決済やダウンロード可能なアプリケーションに対する見方も両者で異なっています。
本レポートは13図と5表を含む48ページで構成されています。