「パーフェクト・ストーム」を乗り切るのは誰か? 下降局面に直面する金融機関を過去の経験から評価
Abstract
オリバー・ワイマンは過去25年間に起きた7回の金融危機について検証し、金融機関が嵐を乗り切るための経営課題を明らかにしました。
現在進行している金融危機の深刻さは、厳しい局面に直面する大手金融機関の脆弱性を浮き彫りにしました。2008年に入って経営破たんや救済を余儀なくさ れた金融機関は過去最大規模に達しています。しかし、業界は過去にも繰り返しこうした下降局面にさらされており、その際の影響を分析することは金融機関が 今後の戦略を策定する上で有意義といえるでしょう。
オリバー・ワイマンは最新レポート「「パーフェクト・ストーム」を乗り切るのは誰か? 下降局面に直面する金融機関を過去の経験から評価」の中で、北米および西欧の銀行、投資顧問会 社、消費者金融業者、保険会社、投資会社、専業金融機関など600社に影響を及ぼした過去7回の下降局面について分析しています。レポートでは、各局面に おける金融機関の対応やそれがバリュエーションに与えた影響に注目しています。分析対象となった約30年間には10年に2~3回の割合で下降局面が生まれており、いずれも1~2年間その状態が維持されています。従って、金融業界は10年間のうち3~5年は下降局面による打撃を受ける可能性が高いといえるでしょう。
金融機関の特性が下降局面下の業績に及ぼす影響は、各金融機関が下降局面に突入する前に採用した事業構成やビジネスモデルによって概ね決定されます。言い 換えると、目の前の嵐を乗り越えるためには、船をいかに上手く操るかということよりどのような船で海に漕ぎ出したかがはるかに重要となります。従って、一 般的には専業金融機関やバンカシュアランスを手がける金融機関よりもユニバーサルバンクの方がずっと有利であると考えられますが、ホールセール資金に対す る依存度の引き下げ、商品構成の多様化による利益の安定化、タイムリーかつ十分な情報開示による投資家信頼感の向上など、金融機関がとり得る対策も挙げられます。
過去の事例からみて、金融機関が嵐を乗り切るためには下落した資産の取得価格が重要となります。今回の危機では多くの銀行が専業型ビジネスモデルからユニバーサルバンキングモデルへの変更を余儀なくされるため、まさにこの点が決め手となるでしょう。
オリバー・ワイマンのパートナーで欧州ヘッドのマーク・ウェルは、「我々は、今回の危機は循環的な上昇局面や資産バブルの単なる終焉ではなく、金融業界の 構造的な変化の表れと捉えています。すなわち、ホールセールビジネスモデルが崩壊して新たなモデルへのシフトが進むほか、規制強化により投資銀行業務は利 益縮小と収益源の変更を迫られるでしょう。」と述べています。
本レポートは32ページで構成されています。