日本の金融機関におけるイノベーション パート1:マネージメントとイニシアチブのギャップ【日本語】
Abstract
セレントは、昨年のグローバルサーベイに引き続き、日本の銀行、保険会社、証券会社、資産運用会社、金融機関向けソリューションベンダーを含む 110の金融業界のプロフェッショナルを対象に、日本の金融業界における「イノベーションサーベイ」を実施し、その回答を分析しました。
その結果、2つのギャップの存在が浮き彫りとなりました。まず、マネージメント・ギャップとして、グローバルでのサーベイ結果と同様、金融機関のイノベーションが、既存のマネージメント構造に大きく依存していること、そして日本においてそのギャップはグローバル以上に大きいこと、が明らかになりました。二つ目のイニシアチブ・ギャップとしては、テクノロジーを必要とする金融機関と、供給するソリューションベンダーのイニシアチブにおいて、明らかな差異が見受けられました。そして、両者共に、イノベーション・イニシアチブに発展の余地が大きいとセレントは考えます。
本 サーベイでは、金融機関におけるイノベーションの取り組みとその到達度を知ることを目的とし、グローバルサーベイと同一の項目で、イノベーションの重要性 認識、自社の取り組み、阻害要因について尋ね、金融機関に所属するプロフェッショナルが、自らのイノベーションをどのように評価しているかを示す指標を、 グローバルと日本の対比と共に得ました。
更に、日本サーベイでは、金融機関向けのソリューションベンダーにもほぼ同様な項目を尋ね、金融機関自らの評価と、金融機関にテクノロジーを提供するベンダーから見たその評価を比較し、イノベーションの動向を分析しました。
質 問項目は、イノベーションに対する重要性の認識、期待するメリット、阻害要因、イノベーションの経験年数、組織・体制、主導部門、NPS(ネット・プロ モーター・スコア)、ツールや手法の有効性、「デジタル金融サービス」への取り組みと多岐に亘り、また数値に換算出来ない、自由回答形式のイノベーション に関する貴重な「つぶやき」も、多数寄せられました。
「多 角化と複雑化の進んだ日本の金融機関において、自社のイノベーションを放置すれば、カニバリゼーション(共食い)はコア業務領域ばかりでなく、あらゆる ニュービジネスにおいて発生してしまうでしょう。イノベーターを嫌われ者の黒い羊として追放させないために、コア業務における日々のカイゼン(改善)の積 み上げと、破壊的なイノベーションを峻別し、後者にこそ、マネージメントとイニシアチブを向けることが重要です。」とサーベイの分析を実施した、アジア金 融サービスグループのシニアアナリスト、柳川英一郎は述べています。また、本レポートを通じて、イノベーションを意図的に起こし、継続するためのイノベーションモデルについて、提言しています。
本レポートは、日本の金融業界のイノベーションに関する一連のレポートの第1弾です。