不正操作を防ぐには:資本市場全体の青写真から
Abstract
先進国では、これまで一般の人が市場操作による影響を直接受けることはありませんでした。しかし、金融危機以降、そうした状況は変わってきています。
セレントの最新レポート「不正操作を防ぐには:資本市場全体の青写真から」は最近の市場の混乱に焦点を当て、投資銀行や金融機関の取引を対象とする検査が増加している現状について調査しました。その結果、こうした金融機関の運営方法をめぐって様々な問題が浮上しています。
これまで世界的な金融危機を招いた一因は、グラス・スティーガル法の廃止に伴い一部の大手金融コングロマリットが複雑なデリバティブ商品を使って高度な投機取引を行ったことにあると考えられていました。しかし、LIBORの不正操作問題や同様の事例をみると、過去20年にわたって市場操作は継続的に行われており、金融危機を引き起こした行為が日常的に行われていたことがうかがえます。また、危機の再発を防ぐためには、ドッド・フランク法や金融市場に対する厳格な規制を導入することが最善の方法であるとの議論も広がっていました。しかし問題の根が深い場合、当局の規制に依存するだけでは問題解決は望めないといえるでしょう。
まずは、金融市場全体がどのように構築されてきたのか、そしてだれの利益を追求しているのかを理解する必要があります。これらを明確にした上で、市場のDNAそのものと市場を構成する金融機関の変革を目指さなければなりません。各組織が重視すべきは金融サービスという言葉の「サービス」の部分ですが、ここ数年はこの点が忘れ去られてきました。
金融機関が健全な業務遂行を促進・奨励するためには、チェック機能とバランス感覚の両方が必要です。主要市場の規制当局が講じている対策は、それだけでは十分とはいえません。当局は監督者という立場にあるため、当局が解決に乗り出した時には既に不正操作後しばらく時間が経っていると考えられます。そこで金融機関は通常のリスク低減にとどまらず、さらに踏み込んで厳格な自主規制を策定すべきでしょう。
「市場操作に関しては、戦術やオペレーション上の要件とは切り離して、戦略的な動機や方向性を検討する必要があります。金融市場の参加者は協調的な取り組みを進めてきましたが、単なるその場しのぎの策や当面の規制要件への準備に終わるケースが多くなっています」と、セレント証券プラクティスのシニアアナリストでレポートを執筆したアンシュマン・ジャスワルは述べています。
16ページから成る本レポートでは、金融市場における組織的な不正操作を一掃するためにどのようなアプローチが有効なのかを探っています。