モバイルNFCの本格的スタート:成熟したモバイルNFC決済市場における銀行の収益性
Abstract
モバイルNFCは長年、銀行業界で最も有望なモバイルテクノロジーの一つと言われてきました。米国では、モバイルNFCのターゲット市場は約2,250億米ドル(約21.3兆円)の「キャッシュ・ユニバース」に相当すると言われています。現金のうち30%がモバイルNFCへ移行、つまり年間で1カードあたり151米ドル(約14,000円)増加し、また年間で1デビッドカードあたり平均1.83米ドル(約173円)増収すると、セレントは予測しています。
多くの銀行は、モバイルNFCが最終的にモバイル・マネタイゼーションにつながると考え、全社的なモバイルバンキング戦略を構築しています。モバイルNFCテクノロジーが「バーチャルな」コンタクトレス・ペイメントカードに埋め込み可能であることが前提ですが、そのカードは現金のかわりに利用され、インターチェンジ収入の増加をもたらすでしょう。残念な事に、ビジネスモデル上の問題が原因で、多くの業界プレーヤーがモバイルNFCのクリティカル・マスに到達できないでいます。モバイル業者は需要が確実に見込めるまでインフラ投資を行いたくないと考えており、また銀行はインフラが整備されるまで、バーチャルカードは発行したくないと考えています。言い換えると、卵が先かニワトリが先かという問題がモバイルNFCプロジェクトの進展を邪魔しています。
しかし、モバイルNFCが本格的にスタートしたらどうでしょう。銀行はどうするべきでしょうか。セレントの最新レポート「モバイルNFCの本格的スタート」では、銀行から見たモバイルNFCの未来予想図を提示しています。レポートでは銀行が口座ベースで、クレジットカード以上の収入をモバイルNFCで得ることは難しいと結んでいます。それは先進国における決済ブランドおよび銀行が既にプラスティックカードの利用拡大に成功しており、実際に移行される現金が比較的少ないと考えられるからです。
本レポートは、モバイルNFCペイメントに対する賛否および銀行に対する影響について分析しています。
- 銀行業界は携帯会社のNFCチップおよびハードウェア投資に対して援助するべきでない
- 結果として、銀行業界はモバイルNFCの投入時、立場は弱くなる
- 銀行における唯一の方策は、現金からの移行率および無線提供(OTA)費用である。銀行は決済ブランドに現金移行戦略を課し、一方でOTA費用は自行で対応すべきである
- モバイルNFCにおけるビジネスチャンスは銀行の全ての顧客ではなく、特定の顧客セグメント内に潜んでいる
出典:セレント
「銀行業界で宣伝されているほど、モバイルNFCを本格的にスタートさせる事は容易ではありません。成功は市場要素により左右されるものなので、モバイル業界プレーヤーはモバイルNFC決済がニッチ市場であるという認識の下、テクノロジーの価格を引き下げざるを得ないでしょう」とセレント・バンキンググループのシニアアナリストで本レポートの著者であるレッド・ギレンは述べています。
本レポートは、13図および1表を含む46ページで構成されています。
注)ドルから日本円への換算レートは、2009年8月31日の仲値(三菱東京UFJ銀行公表による)を参照。