ブラジルにおけるリテールバンキングのトレンド:デジタル化とコアビジネスの変化
Abstract
中南米は世界中の金融機関が注目する市場であると同時に、様々な文化や顧客層が混在する地域でもあります。大きなビジネスチャンスが期待できる一方で、一部の国内金融機関が障壁となって市場への新規参入が難しい状況も見られます。
中南米の国々は、高い成長力に加えてテクノロジーの導入にも積極的に取り組んでおり、市場には幅広い可能性が横たわっています。昔ながらの金融サービスをマス富裕層へ提供することで経営を支えていた銀行にとっては、銀行口座を持たない、あるいは銀行から十分なサービスを受けられない多数の消費者をいかに取り込むかが大きな課題でした。しかし、消費者が新たなテクノロジーや製品、サービスを積極的に取り入れ始めたことによって銀行業界のフラット化が進み、これまでの状況が変化しつつあります。テクノロジーの普及により、これまで未開拓の消費者層を低コストで取り込む方法が出現したのです。とはいえ、この市場への参入には時間がかかるでしょう。
本レポートは中南米の様々な市場を考察するシリーズのブラジル版です。このレポートのシリーズとして、ブラジル版、コロンビア版、チリ版を発行予定です。
ブラジルは独特の特徴を持ち、金融サービスに関して複雑で特別の要件が必要となる大市場です。商品、規制、両方の点で、歴史的に独自に進化してきた経緯があり、ブラジル独特のルール、スタンダードが存在しています。
大手金融機関の大部分をグローバルな大銀行の子会社が占める他の中南米の市場と異なり、ティア1に属する最大手金融機関のほとんどはブラジルの金融機関となっています。島国のような市場であったことが金融市場における排他的なポリシーを形成してきました。この市場に参入しようとする金融機関は、この点を突破することが課題となるでしょう。
「中南米でビジネスを展開するにあたってブラジルは戦略上重要な国であり、銀行やベンダーにとっても膨大なビジネスチャンスが存在しています。モバイル機器の普及、富の蓄積、は金融機関に大きな可能性を意味します」と、とセレント保険グループのシニアアナリストでレポートを共同執筆したホアン・マツィーニは述べています。
「今は銀行口座を持っていない、あるいは口座を持っていても銀行を十分利用していない多数の人々も、新しい方法で金融機関を利用するようになるでしょう。新たなセグメントの包摂は、デジタルチャネル利用によってもたらされるでしょう」とレポートの共同執筆者であるセレント・バンキンググループのアナリスト、スティーブン・グリーアは述べています。