2009年HSAベンチマーク調査:市場トレンドと経済状況
Abstract
医療貯蓄口座(HSA)の普及はさらに広まり、口座数・資産残高とも一貫して増加を続けています。セレントが行った最新のHSAベンチマーク調査(2008年1月~2009年1月)では、対象となるHSAの口座数が46.1%も増加しました。また、HSAの資産残高は同期間に62.6%の増加を記録しています。
米国では今年、医療制度の大幅な改正が法案化される見通しです。新制度下においてもHSAは存続するとみられますが、それには理由があります。仮にHSAを廃止する方向で医療制度を改正するとすれば、HSAを今日のリテールバンキング分野で最も成長著しい商品に育て上げたこれまでの努力が水の泡になってしまうからです。
セレントによる最新のHSAベンチマーク調査でも、HSAの急成長が最も際立った特徴の1つとして浮き彫りとなりました。そのほか、以下の点も明らかになっています。
- 2008年1月〜2009年1月の調査期間中にHSAの平均資産残高は1,561ドル(約15万円)に増えましたが、その伸び率は13%にとどまりました。伸び率が低かったのは、残高ゼロの口座(過去12ヶ月間の拠出金がゼロの口座)が多く、全体の18%を占めたためと考えられます。背景には、2009年1月に比較的多数の口座がオンラインに移行したにもかかわらず、一部の銀行が休眠口座をシステムから消去しなかったことがあるとみられます。
- 投資残高は全預金残高の5%に減少しましたが、景気後退と投資価値の下落という状況を踏まえれば当然といえるでしょう。ただ極めて意外だったのは、大手銀行に開設されたHSAのうち投資残高のある口座数が全体のわずか1〜2%に過ぎなかったことです。
- HSAを専門に手がける銀行では、1口座当たりの収入が84ドル(約8000円)に増加しています。これは、当座預金口座のマージン/スプレッドが改善したことによる所が大きいと思われます。
- 販売戦略の面では、トップ25行と専業銀行の違いが徐々に小さくなりつつあるといえます。トップ25行では医療関連商品の販売チャネルを通じた売上高が増加しているのに対し、専業銀行では事業主から直接新規口座を獲得する傾向が強まっています。
- 大部分のHSA口座は開設時にデビットカードが発行されますが、実際の支払いにおけるカード利用率は66%にとどまっています。また、小切手の利用率が20%となお比較的高いのに対して、新たに導入された総合支払いを利用するケースは全体の1%にすぎません。
出典:セレント
「HSAの手数料率は下落傾向が続いており、月次平均手数料は現在2ドルをわずかに超える水準で推移しています。実際、一部の銀行はHSAを最終的に当座預金口座と統一する方向で検討を始めています。そうなれば、手数料はゼロになります」とセレント銀行プラクティスのシニアアナリストでレポートを執筆したレッド・ギレンは述べています。
本レポートはセレントが過去に発行したHSAベンチマーク調査レポートの内容をアップデートしたもので、新たに取得した情報を掲載しています。レポートでは、HSA分野における銀行のパフォーマンスを最も適正な基準にもとづいて評価するとともに、その根底にある要因およびトレンドについて分析しています。
本レポートは26図を含む全44ページで構成されています。
注)ドルから日本円への換算レートは、2009年5月31日の仲値(三菱東京UFJ銀行公表による)を参照。