ドッド・フランク法とEMIRによるデリバティブ市場の改革:価格決定、評価およびIT投資への影響
Abstract
ドッド・フランク法や欧州市場インフラ規制(EMIR)の施行に伴う電子取引や集中清算への移行を機に、拡張性と実用性を備えた価格決定システムの構築が加速するとみられます。フロントオフィス向け価格システムやミドル/バックオフィス向けバリュエーションシステムへの投資額は年率7.2%のペースで拡大し、2014年には6億3,400万ドル(約493億円)に達すると予想されます。
ここ数年、デリバティブ取引の価格および評価に関する業務慣行は、自己資本比率、リスク管理、会計基準、店頭デリバティブ取引処理、リスク抑制目標などをめぐる業界のプロジェクトや規制を通じて形成されてきました。2008年の経済危機以前にも、デリバティブの価格形成やポートフォリオの評価方法を統一して、フロントオフィスの価格決定機能の強化、時価によるオフバランスシートの正確な資産評価、担保管理の効率化、社内外の様々なステークホルダーに向けたガバナンスと透明性の向上などを求める動きはみられました。ドッド・フランク法とEMIRの施行日が迫るなか、今後こうした流れは加速するでしょう。
セレントの最新レポート「ドッド・フランク法とEMIRによるデリバティブ市場の改革:価格決定、評価およびIT投資への影響」は、業界のビジネスや競争環境を構築し、今後数年間の価格発見・形成メカニズムに変革をもたらし、市場構造を変化させる規制動向について、いくつかシナリオを提示しています。
「ブローカーディーラはより大きなフローを獲得したいと熱望しており、そのためには価格決定機能の強化や、拡大する取引を処理し、取引前後の透明性をほぼ瞬時に報告できるマーケットメイクの仕組みが必要であることを十分に意識しています」と、セレントのリサーチ・ディレクターでレポートを執筆したキュビラス・ディンは述べています。
本レポートは、世界のデリバティブ関連規制や市場構造の進化に関する一連のレポートの1つで、今後予想される構造的な変化がデリバティブ取引の価格決定および評価の業務慣行、システム開発のメカニズム、関連するIT投資にどのような影響を及ぼすかを分析しています。
注)ドルから日本円への換算レートは、2011年10月31日の仲値(三菱東京UFJ銀行公表による)を参照。