量子コンピューティングは進化している: 保険会社は準備すべき
量子コンピューティングとは何か?エラーゼロに近い量子コンピューターの開発は今どの段階にあるか?
Key research questions
- 量子コンピューティングとは何か?エラーゼロに近い量子コンピューターno開発は今どの段階?
- 量子コンピューティングが保険業界に与える影響は?
- 保険会社は何に注力すべきか?
Abstract
量子コンピューティングは、情報の保存および検索において従来のアナログやデジタル手法とは異なる新たな方法を提供するものと期待されている。そしてサイバーセキュリティから創薬、機械学習に至るまで、さまざまな業界に変化をもたらす可能性を秘めており、いくつかの課題には古典システムよりもうまく対処することができる。
最近は量子コンピューティングの話題で盛り上がっている。世界の多くの政府にとって量子コンピューティングはますます国家の戦略的優先事項となってきており、その研究には多額の資金が投じられている。2022年12月、バイデン米大統領はQuantum Computing Cybersecurity Preparedness Act(量子コンピューティング・サイバーセキュリティー準備法)に署名、連邦政府機関に対し「量子コンピューターを攻撃から守るテクノロジーの採用」を促した。
現在使用されているセキュリティアルゴリズムの多くは、速度の遅い従来のコンピューターを活用している。しかし強力な量子コンピューターはこうしたアルゴリズムを簡単に破ってしまうため、機密データが危険にさらされるおそれがある。量子コンピューティングの分野はまだ初期段階にあり、既存の量子コンピューターはサイバーセキュリティを脅かすほどの力はない。当分野の第一人者たちは、量子コンピューターの脅威は5年から10年以内に顕在化すると予測している。
しかし、戦略的優位性を求める一部の政府による量子コンピューティングの進歩における情報の非対称性と世界的な秘密主義を考えれば、このスケジュールはさらに短くなる可能性がある。
量子コンピューターの脅威はすでに、SNDL(store now, decrypt later:今保存して将来復号化する)という攻撃の形で存在している。量子コンピューターと高度アルゴリズムにアクセスできるようになってから復号化できるよう、敵はすでに暗号化されたデータを収集・保存している。世界中の政府がこれをデータセキュリティに対する深刻な脅威と見ている。保険会社はデータをより長く保持する必要があるため、すでにSNDL攻撃の対象となっている。また多くの保険会社がサイバーリスク保険を引き受けているため、商品提供の観点からもSNDL攻撃が懸念される。
本レポートでは、保険会社がこうした攻撃者にどう備えるべきかを説明しているほか、量子コンピューティングが業務に変化をもたらすユースケースについても考察している。ハードウェア、フルスタックソリューション、優れたアルゴリズム、シミュレーター、クラウド製品の向上とともに、量子コンピューティングに関する計画も立てなければならない時期に来ている。