2023年 欧州におけるリテールバンキングのIT優先事項/ 戦略
自動化、データ、クラウドによるアジリティの向上
Key research questions
- 欧州の銀行のIT戦略を推進する戦略的優先事項は?
- 商品とITの最重点投資分野は?
- 欧州の銀行は、生成AI、クラウド、オープンバンキング、高度なデータアナリティクスにどの程度注力しているか?
Abstract
欧州では依然として困難なマクロ経済環境が続いているが、2023年リテールバンクのIT支出は確実に増加した。背景にある主な要因は国や金融機関によって異なるが、注目されるテーマとして、コンプライアンスの維持、および変化する顧客ニーズに対応するために必要なアジリティの強化がある。また、デジタルカスタマーオンボーディングや中小企業向けバンキングなどの主要な分野における顧客エクスペリエンスの強化に重点を置いていることも大きく関係している。さらに、オープンエコシステム (オープンバンキング、BaaS (サービスとしての銀行)、エンベデッド・ファイナンス) の機会を追求するプロジェクトも今や一般的になっている。
特に注目に値するのは、アジリティに重点が置かれていることである。背景には多くの要因があるが、最も根本的な要因の1つは、フィンテック業界の成長とパンデミックへの対応によって生じたカルチャーの変化である。このところ、迅速性と機敏性を高めるという方針を公言するリテールバンクが増えており、こうした銀行はアプローチを適応させる必要があると認識している。クラウド技術の導入ペースの速さ、AI関連の活動の急増、オープンエコシステム構築プロジェクトへの投資はすべて、銀行の意識が大きく変化していることの現れである。
リテールバンキング業界の戦略的および商品レベルにおけるテクノロジーの優先事項のインサイトを明らかにするために、セレントは再びテクノロジーのインサイトと戦略に関する調査を実施した。セレントはリテールバンキング業界のシニアエグゼクティブ228名から見解と意見を収集し、今後議題の中心になるIT投資先、および最も大きな変化が予想される商品とプロセスについて詳細な情報を得た。グローバルなサンプルには、欧州の金融機関で商品部門やテクノロジー部門を担当する幹部84名からの回答が含まれている。
主な調査結果の一部を以下に示す。
- 欧州のリテールバンクの74%が、フィンテックやチャレンジャーバンクによる競争上の脅威が増していると回答している。
- 65%が現在のIT戦略の最も重要な3つのドライバーの1つとして、スピードとアジリティの向上を挙げている。
- IT予算は緩やかに増加している。2024年の予算も増加する見通しであり、リテールバンクでは4.5%増と予想している。
- 43%がデジタル口座開設を主要な取り組みに挙げている。特にフィンテック企業の市場参入による影響から、合理化されたデジタルオンボーディングエクスペリエンスを提供する重要性がますます高まっている。
- 現時点では、54%は生成AIのユースケースを模索している段階だが、32%は2023年または24年のロードマップに生成AI技術に関連するプロジェクトを組み入れている。
リテールバンク業界へのメッセージは明らかである。欧州の銀行は、いくつかのワークフローと商品分野においてレベルを高めるとともに、将来の機会により迅速に対応するための機能に投資する計画である。したがって、こうした変化に対応できない銀行は取り残されてしまうリスクがある。