大きすぎて救済できない? 先進国で進む銀行の寡占化
Abstract
米国ではこの15年間にかつてないほど商業銀行の寡占化が進みました。トップ5行の預金シェアは1995年時点では11%でしたが、現在は40%近くになっています。この状況は、世界の他の地域に比べてどう評価できるのでしょうか。銀行が「大きすぎて救済できない」と言われるのは、こうした銀行の寡占化が原因なのでしょうか。
セレント最新レポート「大きすぎて救済できない?先進国で進む銀行の寡占化」は、世界各地における銀行預金の寡占度について調査しています。米国では過去20年間に預金の寡占化が急速に進みましたが、米国よりもはるかに寡占度の高い国もみられます。その結果、これらの国では競争が弱まると同時にシステミックリスクが高くなる可能性があります。
銀行の寡占化が進めば、業界全体の預金を保護することが難しくなります。市場の寡占度を測る指標として一般的に使われているのはハーフィンダール・ハーシュマン指数(HHI)です。セレントが複数の国の銀行業界のHHIを調べたところ、市場競争が妨げられるほど銀行の寡占化が進んでいるのはカナダとロシアの2カ国のみであることがわかりました。米国は寡占化が進みつつあるとはいえ、今回調査した中では最も寡占率の低い国の1つにとどまっています。
出典:セレント
「最大の懸念は、銀行が単に『大きすぎてつぶせない』だけでなく『大きすぎて救済できない』ようになることです。政府の力で銀行が救済できなくなるような事態はいつ起こるのでしょうか?銀行の規模拡大をどこまで認めるべきなのでしょうか?」とセレント銀行プラクティスのシニアバイスプレジデントでレポートを執筆したバート・ナーターは述べています。
米連邦預金保険公社(FDIC)は、国内市場における預金シェアの上限を10%と定めています。他の国では、これを上回る預金シェアを獲得している銀行が珍しくありません。
レポートでは、欧州諸国の預金寡占度に加え、各国の銀行およびソブリン債のクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)スプレッドを比較しています。
本レポートは33図を含む全42ページで構成されています。