バリアブルリカーリングペイメント入門編:オープンバンキングにおける次の大ブーム?
Key research questions
- バリアブルリカーリングペイメント(VRP)とは?
- 銀行業界にどのような商機があるのか?
- VRPが拡大した場合、銀行業界はどのような分野に取り組む必要があるのか?
Abstract
銀行業界でバリアブルリカーリングペイメント(VRP)がかなりの議論を巻き起こしている。その理由は、VRPはカードオンファイルやデジタルウォレット、さらにはダイレクトデビット決済に代わる実行可能な手段になる可能性があるからだ。そのためのビルディングブロックがすべて整っているわけではないが、銀行にとって導入する機会は現実のものとなっており、真剣に検討する価値がある。
こうした議論が起きているのは英国だけではない。欧州の他の国でもダイナミックリカーリングペイメントをめぐって議論が起きており、世界中でリアルタイム決済インフラのためのオーバーレイサービスへの関心が高まっていることから、VRPは、あらゆる国の銀行、インフラプロバイダー、決済サービスプロバイダー(PSP)、規制当局が注視すべきテーマである。
VRPとは何か?簡単に言えば、これはオープンバンキング決済(OBP)の新しい形である。VRPは、ライセンスを受けた第三者が(顧客の同意を得て)顧客の口座からの決済を実行するという点でOBPと同じコア機能を提供し、通常は国内のリアルタイム・レールである既存の口座間(A2A)インフラを使って資金を移動する。VRPがOBPと異なるのは、顧客が時間の経過とともに変化する金額の決済の実行に継続的に同意できる点である。それによりVRPはOBPのコンセプトを、「バンクアカウントオンファイル」という形でのダイレクトデビット決済やカードオンファイル決済の潜在的な代替手段としての新たな領域のユースケースへと発展させる。
英国のCMA9(大手銀行9行)は、VRPにスイーピングのユースケース(同じ顧客が保有する口座間の資金移動)を提供するよう義務付けられているが、これを商業ベースで展開する非スイーピングのユースケース(別の受取人を伴う資金移動)に拡大させるというオプションもある。したがって、非スイーピングのユースケースを提供するVRPは、銀行にとって明確な収益機会になる。というのも、間接的な利益が大半を占める他のオープンバンキングの分野とは異なり、このVRPでは口座を保有する金融機関が第三者による非スイーピング取引の決済の実行に対して手数料を課すことができるためである。したがって、そのような決済が行われるたびに銀行に利益が還流する。
こうした非スイーピングのユースケースを提供するVRPに関心が高まっているにもかかわらず、そのためのインフラはまだ整っていない。VRPの成長を実現する提案とまではいかないが、商業用VRPを実行可能な決済オプションにするうえで銀行業界が取り組むべき4つの課題を以下に提示する。
- 価格設定と紛争解決の仕組みを明確にする必要がある。
- エコシステム全体で最低限必要なプレイヤーをそろえる。
- 最終的には多国間の枠組みが必要になる。
- 銀行はAPIの可用性を高めるための取り組みを行う必要がある。
短期的には、口座への資金調達(追加を含む)やサブスクリプション決済に関するユースケースに機会がある。また、デジタルコマースペイメントや請求書決済もはるかに高い収益性が見込めるが、開発には時間がかかるだろう。
2023年にはこれらの点で進展が見られる可能性が高そうだ。セレントは、英国のいくつかの銀行が非スイーピングのVRPの商業的な枠組みについて活発に議論していることは認識している。しかし、利益を食い合う可能性があるため、他行にとってはこの点が困難な課題となっている。しかしこの問題は、最終的には顧客の需要によって決着がつくだろう。VRPの導入が加速し始めた場合、銀行は競合他社に破壊されるのではなく、自らを破壊してイノベーションを実現することで恩恵を受けることができるだろう。