健康管理の動機付けを提供する ウェルネス・リワード市場の動向
Abstract
医療費の上昇を受け、企業経営者はコスト削減の ための様々な手段を模索しています。中でも、従業員に予防的な健康管理を促すためのウェルネスプログラムや報奨金制度を補足的に利用する手法が広まりつつ あります。この分野全体のビジネスチャンスは極めて大きく、ウェルネス・リワード市場の規模は2013年には27億米ドルを超えるとセレントは予測してい ます。
ウェルネスプログラムはプラスの投資利益率を上げており、経営側は従業員の参加拡大に大きな関心を寄せています。参加者を増やすためには従業員の動機付け となる奨励金や報奨金が重要となります。企業の間では、従業員に金銭的支援を行って自らの健康管理を促すことが利益につながるとの認識が広まっています。 セレントの予測では、2008年には従業員数500人超の大企業の約51%が何らかの報奨金を伴うウェルネスプログラムを導入するとみられます。
2013年には、そうした企業の数は全体の94%に達するでしょう。医療費の上昇やいかなる手段を講じてもコスト削減を図りたい経営側のニーズが、この傾向にさらに拍車をかけるとみられます。
一見すると、①医療サービス②金銭的な動機付け③市場の拡大という3つの要素の組み合わせは、ヘルスケアバンキング市場における金融機関の新たな役割の可 能性を示唆しているようにも思えます。実際、多くの金融機関や金融テクノロジーベンダーはそうした新たな役割の可能性について真剣に検討してきました。し かし、ウェルネス・リワード市場に進出する銀行やそのベンダーは保守的なアプローチに徹するのが賢明でしょう。
「ウェルネス業界における付加価値の決め手は極めて単純で、それは『情報』です。経営者、従業員、プロバイダー、ヘルスプランなどによる情報ニーズはいずれも強まっており、銀行がウェルネスプログラムの情報取りまとめ役を果たすのは難しいでしょう」 とセレント銀行プラクティスのシニアアナリストでレポートを執筆したレッド・ギレンは指摘しています。
こうしたことから、ウェルネス・リワード市場における競争を主導するのは銀行ではないとみられます。むしろ銀行は、傍観的立場からビジネスチャンスをうかがうことになるでしょう。
ウェルネス・リワード市場のエコシステムの中で、銀行が参入可能な唯一の分野は実際の「報奨金」の部分であるとみられます。銀行が提供できるサービスとし ては、多目的なプリペイドカードや医療貯蓄口座(HSA)への拠出が考えられます。しかし、ウェルネスプログラムにおいてこれらはコモディティ化されるた め、そうした事業に多額の投資を行うことは成長戦略として有効とはいえません。様々な報奨金のうち銀行とそのベンダーが促進・支援する対象として理にか なっているのはHSAへの拠出でしょう。これは銀行の中核業務を生かすものであり、預金基盤の拡大にもつながるからです。
しかし、HSAへの拠出が大きなビジネスチャンスにならないことは明らかです。従業員の大部分(98%)はHSAを開設しておらず、その成長性は限定的で す。仮に多くの従業員がHSAを開設していたとしても、それらがみな同じ銀行にあるとは限りません。セレントの予測では報奨金として支払われるHSAへの 拠出金は2013年には総額3億5,100万ドルに達するとみられますが、特定の1行に大きなビジネスチャンスをもたらすことはないでしょう。
本レポートでは様々なタイプの報奨金とその普及率、動機付けとしての効果を明らかにしています。また、ウェルネス・リワード市場の主要プレイヤーのうち、報奨金としてプリペイドカードを発行しているケースも取り上げています。
本レポートは15図と2表を含む全42ページで構成されています。