DIMENSIONS:ITの課題と優先事項2025年版(リテールバンキング編)
最優先課題は「製品強化」「レジリエンス」「AI」
Key research questions
- 今年、最も投資が期待される製品分野は?
- AI投資が最も影響を与えるのは?
- オープンファイナンスの優先度は?
Abstract
現在、銀行業界が変革期にあることは間違いなく、さまざまな商品や顧客セグメントにわたって新しいビジネスチャンスが偏在している。一方で、銀行が直面している問題も多い。不安定な政治や経済、高まる競争圧力、増え続けるコンプライアンス要件などを背景に、金融機関には、以前にも増して、より迅速により低コストでより多くのことを顧客に提供することが求められている。さらに、商品開発への投資、収益と利益率の改善に対する期待も高まる一方である。このような今日の経営環境で銀行が成功するには、アジャイルで効率良い業務運営を目指して、技術投資を拡大することが必要である。
各銀行の計画や予算はそれぞれのニーズや優先事項によって異なるが、業界全体で共通する重要ポイントがいくつかある。セレントが実施した経営幹部を対象とした「Dimensions調査2025年版」では、商品開発のペースを保ちながらも、高いレジリエンスを実現することが今年の課題であることが明らかになった。デジタル口座開設、デジタルチャネルの強化、新たな決済サービス、オープンファイナンスの活用などは、多くの銀行が大きな予算を当てている分野である。
この課題に対応するには、フロントオフィスとミドルオフィスにおいて多様な使用事例が考えられる(生成AIを含む)AIと高度なデータ分析技術導入を進めることが必要である。多くの場合、このような取り組みは、2024年までのデータ管理への投資を基盤として実施されることとなる。デジタルアイデンティティや自動化も、デジタルチャネルのユーザー体験を改善するものとして、重点を置くべき分野である。さらに、これらの取り組みに共通して大切な要素は、クラウドサービスのさらなる導入である。
セレントは、グローバルなリテールバンキングの経営幹部を対象に「Dimensions調査2025年版」を実施した。本調査では、回答者245名のインサイトや意見から、銀行業界全体の状況を分析し、今後1年間で優先されるべき技術、最も大きな変化が予想される商品やプロセスなどを明らかにした。
調査から分かったこと:
- 経営環境は依然として厳しい。グローバルレベルでは、53%の銀行が、顧客の獲得と維持が1年前よりも難しくなっていると答えている。
- 商品開発が重要な課題となっている。全部て44%の銀行が、強化商品やアイデアを実現するための投資が、テクノロジー戦略における最重要要因3つのうちの1つであると回答している。
- これに対応するとして、技術予算が増加傾向にある。「Dimensions調査」によると、今年のIT投資額は平均5.8%増、北米の銀行では6.3%増となっている。2026年への期待はさらに高く、業界平均で6.4%の予算増が見込まれている。
- 市場の36%が優先課題としている「デジタル口座開設」が、今年の商品レベルでの最大の優先課題である。その他の優先投資分野は、デジタルチャネルの強化、新決済サービス、オープンファイナンスである。
- これらの実現を支えるのが、AI技術へのさらなる投資である。これは29%の銀行にとって技術投資における唯一かつ最大の分野であり、フロントオフィスからミドル、バックオフィスに至るまで、多様な使用事例が検討されている。生成AIは、組織全体におけるデータ活用の拡大を進めるのに重要な役割を担い、2025年にこの技術を使った顧客向けサービスの開始を計画している銀行は全体の65%にものぼる。