バイオメトリクスのマスリテールにおける実用化:日本で進む静脈認証ATMカード
Abstract
(このレポートは2006年1月24日に日本語で発表されましたが、英語版を2006年3月29日に発行しました。)
日本の金融業界が抱える「偽造・盗難キャッシュカード問題」を解決する切り札として、登場した「静脈認証キャッシュカード」が注目を集めて います。2004年10月の導入以来、業界全体に普及の方向に向かっており、2005年12月現在で最大手銀行2、地方銀行5、信用金庫等8の15機関が サービスを開始し、50を超える機関が今後の導入を予定しています。
現代社会の最重要課題であるセキュリティ問題の解決を求めて、金融業界でもバイオメトリクステクノロジーを採用する動きが世界的に広がっています。しか し、マスリテールの領域に限っては、他分野に比べてその動きが遅れています。その背景には、コスト面、アプリケーションの標準化、顧客への利用促進等の課 題が残っているからです。
このような状況下、日本の銀行業界では、静脈認証という新しいバイオメトリクステクノロジーをATMのセキュリティ対策に利用したサービスが注目を集めて います。2003年末から日本国内で広がった偽造・盗難キャッシュカード問題を受けて、セキュリティ強化に迫られた銀行業界では、静脈認証という新しいバ イオメトリクステクノロジーに一つの解決策を求めました。2004年10月に、東京三菱銀行(現三菱東京UFJ銀行)が手のひら静脈認証キャッシュカード のサービスを開始して以来、最大手金融機関の導入予定発表も相次ぎ、全般に普及の方向に向かっています。2005年12月現在で、最大手銀行2、地方銀行 5、信用金庫等8の15機関がサービスを開始しており、50を超える機関が今後の導入を予定しています。
「マスリテール分野でのバイオメトリクスの利用という点では、世界初のチャレンジとも言える静脈認証キャッシュカードのサービス展開ですが、これを成功さ せることができれば、そのテクノロジーと成功へのプロセスは、世界中のリテールバンキング業界にとって参考になるでしょう」と「バイオメトリクステクノロジーのマスリテールにおける実用化:日本で進む静脈認証ATMカード」の執筆者である能瀬 順子は述べています。
レポートでは、マスリテールという未踏の領域において、静脈認証という新しいテクノロジーの実用化が一般化のレベルまでたどり着けるか、その可能性を探る ことを目的に、日本における「静脈認証キャッシュカード」サービス展開の実際を検証しました。まず、ニーズの背景を、日本の金融業界の主にATMとセキュ リティ問題を巡る動向を整理することで、明らかにしています。さらに「静脈認証キャッシュカード」を中心に、バイオメトリクスの技術面を全般的に解説した 上で、バイオメトリクス技術を備えた個々の製品の詳細を紹介しました。最後に「静脈認証キャッシュカード」の日本国内最大手金融機関4行、東京三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行、日本郵政公社による導入例を挙げました。
このレポートは8図と10表を含む49ページで構成されています。