キャッシュマネジメントの画期的なイノベーション:先駆的銀行とポイントソリューションパートナーによるキャッシュの可視性/ 予測に関する取り組み
Abstract
人工知能(AI)と機械学習(ML)の進歩、コネクティビティ、およびテクノロジーインフラの最新化により、キャッシュマネジメントにおいて画期的なイノベーションが起きている。さらに、こうしたテクノロジーの分野だけでなく、銀行の戦略的アプローチにおいてもイノベーションが生まれている。先駆的な銀行はバリュープロポジションを再考し、単なる商品/サービスの提供から、業務効率とスマートな意思決定という形で顧客に付加価値を提供する方向へと転換を図っている。こうした銀行は、最終的にインテリジェントな財務の提供を目指している。
パンデミックによる経済への影響が続く中、キャッシの可視性、キャッシュフローの予測、キャッシュフロー予測に基づく行動を含むキャッシュマネジメントの重要性が浮き彫りになっている。多くの企業には、キャッシュマネジメントと全体的な運転資本管理の弱点に対して厳しい目が向けられているが、調査を行ったところ、各社は2021年から行動を開始しており、2022年にはさらなる改善を目指してることが明らかになった。こうした取り組みの一環として、先駆的な銀行は弱点を解決するソリューションを開発している。一部の銀行は、キャッシュフロー予測を最強のサービスとして位置づけており、アドバイザーとしての役割の拡大を目指し、最終的にはウォレットシェアも拡大したいと考えている。
図1:インテリジェントな財務に向けた波
現在、インテリジェントな財務を追求する動きが進んでいる。セレントは最先端のキャッシュフロー予測サービスを開始している3つの先駆的な銀行を紹介する。その手法には、パートナーシップ契約によるもの (Bank of America) と、独自のソリューションの構築によるもの(J.P. Morgan、PNC)がある。また、パートナーシップの評価に関心がある銀行のために、イノベーションで最先端をいくポイントソリューション・プロバイダーであるCashforce、Tesorio、Trovataの3社について検証する。さらに、2022年に発売予定のNTT DATAのキャッシュフロー予測ソリューションについても概略を紹介する。このソリューションは、銀行が顧客にサービスを提供するために開発されたものである。
インテリジェントな財務の提供は長期的な挑戦であり、持続可能な競争における差別化につながるだろう。キャッシュフロー予測をゲートウェイサービス、すなわち追加サービスの利用につながるサービスとして位置づけている銀行は、競争優位を獲得するだろう。こうした銀行は、顧客の現在と将来のキャッシュフローを十分に理解することで、アドバイザリーサービスや規範的なツールを使用して顧客により優れたサービスを提供できる。その結果、顧客は最適なタイミングで最適な行動を起こすことや、適切なタイミングで適切な製品を提供すること、あるいは製品を調整して最適な使用を実現するといったことが可能になる。また、こうした銀行は、日々スマート性が向上している機械学習モデルを使用していることから大きなリードを確立する可能性があり、他社がこの差を縮めることはますます困難になるだろう。