欧州における決済データの収益化機会
企業が求めるデータ主導型サービスを特定する
Key research questions
- 欧州の法人顧客にとって最優先事項となっているのは、どのようなサービスの向上か?
- 銀行業界の収益機会はどこにあるのか?
- 顧客が必要としているサービスを提供しない場合、どのようなリスクが生じるのか?
Abstract
法人顧客が取引銀行に求めているサービスについて理解することが、これまでになく重要になっている。ますます複雑化する業務環境に直面している大手企業は、様々な目的で銀行にサポートを求めている。具体的な目的は企業によって異なるが、ほとんどがコスト削減と業務効率向上という2つのテーマに分類できる。
こうした状況は、もちろん今に始まったものではない。以前から法人顧客は取引銀行に対し、より豊富で価値のあるサービス提供を常に促してきた。しかし、現在の市場にはこれまでと異なる点がある。それは、市場の競争が激化する中、顧客が提携できるプロバイダーの選択肢が大幅に増えていることである。そのため、現在は、必要なサービスにアクセスするために新たなプロバイダーとの関係を構築するという発想が多くの顧客の間にかなり浸透しており、銀行にとって大きな懸念材料となっている。
こうした状況を受け、銀行では行動を起こす緊急性が高まっている。今や、問題は投資するかどうかではなく、サービスを強化して新しい収益を生み出す一方で既存のビジネスを保護するために、どうやって現状に適応していくべきかということである。そこで、銀行業界が取り組むべき課題として浮上しているのが、データの収益化、すなわち銀行が保有するデータ資産を利用して商業的利益を支援するという考え方である。すでに多くの銀行が決済データを活用し、業務の効率化や対顧客サービスの強化に向けた取り組みを支援しているが、こうしたデータの収益化への関心はここ数カ月で急激に高まっている。
欧州で活動する銀行の今後の方向性を理解するために、セレントはデンマーク、フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、ノルウェー、ポーランド、スペイン、スウェーデン、英国の95の金融機関と103の大手企業顧客を対象に一次調査を実施した。その目的は、企業が直面している課題と、欧州で活動している銀行の具体的な機会を特定することである。本レポートは、アジアおよび北米の法人顧客のニーズに特化した各調査レポートを含む3回シリーズの最終回である。
欧州で活動している銀行の主な調査結果は以下の通りである。
- 欧州で活動している銀行の83%が、決済データを活用して付加価値サービスをサポートすることが銀行にとって重要な機会であると考えている。
- しかし、決済データを活用してサービスの向上をサポートする戦略を取っていると回答した銀行は67%にとどまっている。
- 40%が、決済データをさらに活用する上での障害として、規制やコンプライアンスのハードル(GDPRなど)を挙げている。
最も重要な点として、企業が費用を支払ってでも受けたいと考えているサービスについて分析することで、銀行業界に以下の複数の収益機会があることが浮き彫りになった。
- 65%が、効率化を実現できるパートナーがいれば、バンキング業務の一部または全部の移行を検討すると回答している。
- 企業の33%が、費用を支払ってでも受けたい上位3つのサービスの1つとして、リアルタイムのキャッシュバランスを挙げている。
- 25%が、意思決定の向上をサポートするデータ主導型ツールへのアクセスに費用を支払うと回答している。
銀行には何もしないという選択肢はない。収益拡大を実現する分野はいくつかあるが、既存顧客との関係を維持するために投資することも収益の拡大と同様に急務である。