コンプライアンスとITの好循環へのアプローチ
Abstract
(このレポートは2004年11月4日に"The Virtuous Cycle of Compliance and IT?"というタイトルで英文で発表されましたが、和訳版を2005年4月11日に発行しました。)
保険会社が課題解決型の戦略的なアプローチにシフトすることによってコンプライアンス関連のIT投資は、約25%削減され、この総額は業界全体で3億5,000万ドル以上(約370億円)になるとセレントは見ています。
米国の保険会社とそのIT部門にとって、法令順守の重要性はこれまでになく高まっています。セレントの概算では、サーベンス・オクスリー法をはじめGLBA(金融機関向け顧客情報守秘に関する法律)、HIPAA(患者に関するデータおよびプライバシーを定めた連邦法)、PATRIOT法、その他様々な州法に対応するため、保険会社は新規プロジェクト向けIT予算(業界全体で14億ドル/約1,500億円)の平均20%をコンプライアンス関連プロジェクトに振り向けている模様です。
セレントの最新レポート「コンプライアンスとITの好循環へのアプローチ」は、保険会社が抱えるコンプライアンス上、システム上および業務上の重要課題を明らかにした上で、それらがどのように重複しているかを検証しています。また、ビジネス価値の大幅な向上をもたらしたコンプライアンス関連ITプロジェクトを幾つか紹介し、保険会社とソリューションベンダーが留意すべき重要事項の提示で結んでいます。
これまで保険会社は、新しい法律が施行されるたびに各法律の個別要件に早急に対応しようとするあまり、それらを業務全般に通じる課題に照らして総体的かつ戦略的に対処するというアプローチを採ってきませんでした。コンプライアンスに関連するIT対策を法令の枠組みの中で個々の法令に対応していく受身の手法から、業務上の課題解決に向けた戦略的手法に変えることで、保険会社の新規ITプロジェクト予算に占めるコンプライアンス関連プロジェクトの額を少なくとも4分の1縮小できるのは確実です。
「コンプライアンス要件の大部分は幾つかの重要課題を伴いますが、それらはまたIT上の4つの重要課題に振り分けることができます。すなわち、①データおよびネットワークのセキュリティ、②データのクオリティ、③業務・財務上の透明性、④記録の保管およびアクセシビリティです。これらは、クロスセリングの強化、プライシングおよびアンダーライティングの能力拡大、業務情報および戦略計画の強化、マルチチャネル販売の拡充というような業務プロジェクトで求められるIT上の課題とも重なります」とセレント保険グループのマネージャーで上記レポートを執筆したマシュー・ジョセフォウィッツは述べています。
セレントは本レポートで、保険会社がコンプライアンス上および業務上のIT課題に共通点があることを認識し、コンプライアンス部門とIT部門が元来敵対者ではなくパートナーとなり得ることを知る必要があると提言しています。両者が連携することで、強く必要とされながらも部門単独ではコストを負担しきれないシステム改善が実践し易くなり、同時に各部門の業務効率化と会社全体のビジネス価値の創出にもつながるはずです。
本レポートは、5つの図と4つの表を含む全21ページから構成されています。
注)米ドルから日本円への換算レートは、2004年10月29日の仲値(東京三菱銀行公表による)を参照。