不快感を与えないように:顧客データ分析によるメッセージ配信における注意点
Abstract
セレントは、金融機関が顧客の個人情報や分析結果をもとに顧客に送付する可能性のあるメッセージを米英の顧客宛てに試験的に送付しました。その結果、多くの人が、金融機関を利用した場所や取引データを示唆するメッセージに不快感を持つことが分かりました。
セレントの最新レポート「不快感を与えないように:顧客データ分析によるメッセージ配信における注意点」は、セレントが調査参加者に対して3つの仮想メッセージを試験的に送付した結果を明らかにしています。調査参加者には、メッセージに対する不快感を1~7の段階で評価してもらいました(受信したくないと感じたメッセージを1、受信してもよいと感じたメッセージを7とする)。調査では以下の3種類のメッセージを使用しました。
- 投資先と価値観についてのメッセージ:
「お客様のポートフォリオにはご自身の個人的な価値観に合致しない投資先がいくつか含まれているように思われます。こうした問題(例えば、環境目標を満たしていない、動物実験を行っている、戦争に関与しているなど)について協議されたい場合は、ぜひ当社の担当者までお電話下さい」 - 位置情報に基づくオーソライゼーションについてのメッセージ:
「当社は、海外で当社のサービスにアクセスされたお客様に対して、当地でカードと口座をご利用いただけるよう事前承認しました」 - 位置情報と購買活動に基づくメッセージ:
「お客様が先ほど購入された商品は、お客様の現在位置により近い店舗で10%安くご購入いただくことが可能です。詳細はここをクリックしてご覧ください」
位置情報に基づくメッセージ(これらは一般にリテールバンキングでよく使われる)を取り上げた背景には、キャッシュマネジメント・サービスの拡大に加え、リテールバンキングとウェルスマネジメントの融合が進んでいることがあります。
ウェルスマネジャーの多くは、アナリティクス分野への投資を拡大する中で、顧客のプライバシーをめぐる問題の解決を迫られています。さらに顧客の特性を理解し、こうしたメッセージに対して好意的、否定的どちらに受け止められる可能性が高いか把握する必要があります。
下表は、統計的に顧客の特性と上記3つのメッセージに対する態度には高い相関性があることを示しています。年齢とメッセージに対する態度との間には負の相関性があり(すなわち回答者の年齢が高くなるほど、メッセージへの好感度が低くなる)、これは3つのメッセージ全てに共通しています。一方、ロイヤルリティー・プログラムを利用している顧客は、メッセージに対して好意的な反応を示しています。また、米国の回答者は投資先と価値観に関するメッセージにより好意的に反応する傾向が見られました。
「調査結果は、ウェルスマネジャーに多くを示唆しています。まず、顧客のセグメント化の重要性。セグメント化を行うためには分析が必要であり、分析を行うためにはより高度なセグメント化戦略が求められます。そして、分析の最終目標は、1つのセグメントに到達することです。しかし、その過程では試行錯誤が繰り返されることになるでしょう。つまり、分析およびデータ管理システムとCRM(顧客関係管理)システムを緊密に連携させることで、アドバイザー、マーケティングチーム、プロダクトチームが必要なセグメント化モデルを構築し、入手したデータを着実に有効活用できるようにする必要があります。またウェルスマネジャーは、顧客分析の結果をサービス向上と商品改善のいずれ(または両方)の目的に利用するのかを決めておくべきでしょう」と、ウェルスマネジメントのリサーチマネジャーでレポートを執筆したイザベラ・フォンセカは述べています。
本レポートは「保険会社からの、最先端の顧客データ分析を駆使したメッセージを顧客はどう思っているか?」に際して、セレント保険グループが収集したデータに基づいています。レポートは、行動分析の結果に応じて送られるメッセージ(contextual messaging)を米英の顧客がどう受け止めているかを明らかにしています。中でも、投資先と価値観についてのメッセージに対する顧客の反応を詳しく分析しています。投資先を把握し、顧客の価値観を理解することは、ウェルスマネジャーの中核業務であると考えられるからです。そのほか、ウェルスマネジャーによる顧客データおよび分析の利用方法についてもヒントを示しています。