中国の保険市場とIT動向の概要
Abstract
中国の保険会社によるIT投資総額は、2005年の20億米ドル(約2,200億円)から2009年には50億米ドル(約5,500億円)へと飛躍的に拡大するでしょう。
中国は、急速に世界の重要な経済圏になりつつあります。同国の金融市場の規模はまだ米国、欧州、日本に及ばないものの、急伸する経済成長率や潜在市場の巨大さから、保険会社やソリューション・プロバイダーにとってたいへん重要な事業拡大の舞台となっています。セレントの最新レポート「中国の保険市場とIT動向の概要」は、この有望な市場の概要を示すと同時に、地元中国系および外資系の保険会社双方の、組織上/IT上の重要課題に関する総合的な視点に立った調査結果を提供しています。今後発行するレポートでは、同市場の特定分野について、さらに詳しく検証したいと思っています。特に、地元と外資系のソリューション・プロバイダーそれぞれが果す役割と市場での立場に注目しています。
中国の保険市場では2000年以降保険料収入が3倍に増加し、現在は約600億米ドル(約6兆6,000億円)です。セレントは、さらに2009年までには1,000億米ドル(約11兆円)を突破すると見ています。IT投資額は、現在保険料収入の約3.5%ですが、ますます複雑化する保険会社のITインフラの構築が続いている状況から、2009年には保険料収入の5%まで増加するだろうと、セレントは明言します。
「この市場では地元中国系と外資系の保険会社が競合していますが、両者はそれぞれ異なる組織上/システム上の課題に直面しています。中国企業は、市場に関する知識や特に規制当局との関係においては有利な立場にありますが、商慣行やシステム面の整備の遅れによってその競争力が削がれています」と、セレントの保険プラクティスのマネージャーで今回のレポートの主著者であるマシュー・ジョセフォウィッツは指摘しています。さらにジョセフォウィッツは続けます。「一方、外資系参入組は、これら商慣習やシステム面では概して中国企業よりも進んでいます。但し、外資系企業の多くがこれまで事業を展開してきた成熟度の高い市場とは異なる環境下の、この新しい市場に適用しなければなりません」
中国国内の保険会社は新旧にかかわらず、成熟したITインフラの構築という点ではいずれもいまだ初期段階にあります。このため、米国や欧州の保険業界を悩ませている「レガシーシステム」の問題とは概ね無縁と言えるでしょう。ただし、今後、中国独自の「レガシーシステム」問題発生リスクを最小限に抑えるために、将来の課題を見据えた戦略的対策を講じることが不可欠です。
中国政府は先ごろ人民元を対ドルで2%切り上げ、今後の一段の切り上げにも道を開きました。人民元の固定相場制が改められたことで、中国金融セクターの驚異的な成長が幾分減速することも考えられますが、同国の金融市場はまだ十分にサービスが行き渡っていないことから、それほど急激な影響が出るとは考えにくいでしょう。中国全体の経済成長が多少鈍化しても、金融サービスの分野には多大な成長余地があるということです。米国や欧州の金融機関やソリューション・ベンダーにとって、中国は引き続き重要な成長市場となるはずです。
このレポートは全18ページから成り、11の図表が掲載されています。
注)米ドルから日本円への換算レートは、2005年6月30日の仲値(東京三菱銀行公表による)を参照。