保険業界のBPO市場調査
Abstract
米保険会社のうち数社は、すでにビジネスプロセスアウトソーシング(BPO)を実践しています。しかし、セレントが行なった調査は、ITアウトソーシング(ITO)の分野では成功を収めたにもかかわらず、BPOの活用には慎重な姿勢をとる保険会社の現状を浮き彫りにしています。セレントは、保険会社の中核業務におけるBPO投資は今後緩やかなペースで増加し、2006年に30億ドル(約3,400億円)近くに達すると予測しています。
保険会社は戦略目的達成のためにアウトソーシングが有効であることは認識しているものの、BPOに対する根強い懸念が、その活用の劇的な拡大を妨げています。
セレントのシニアアナリストで最新レポート「保険業界のBPO市場調査:BPOの本格的な普及に至る道のり」の著者であるクレイグ・ウェーバーは次のように述べています。「BPOがビジネスの柔軟性やコスト削減を実現する、極めて有望な手段であるということは、誰もが認めています。しかし、なお未解決の問題も残されていることから、数年前の時点で確実視されていたBPOの急速な拡大はいまだ実現していません。」
当レポートは保険業界におけるBPOの現状をまとめた上で、保険会社のタイプ、事業規模、対象となるビジネスプロセスなどの要因に沿って、BPOの契約内容を分析しています。ここで基にしたのは、北米を事業基盤とするBPOプロバイダー14社から提供された契約データで、その中には、194件の保険会社向けBPO契約が示されています。データ提供に応じたプロバイダーはアクセンチュア、ACS、CGI、Computer Sciences Corporation、Connextions、EDS、First Notice Systems、HCL Technologies、IBM、Keane、ユニシス、Wipro、WNS、ゼロックスの14社です。
ウェーバーによると、多くの保険会社は、保険というバーティカルな業界の専門的な業務を、外部の業者に委託できるのか、未だに疑問視しています。「たとえベンダー側が十分な専門的業務知識の習得を証明できたとしても、社外の人員管理コストの追加的な発生といった別の問題点も残ります。また、BPOに対する世間の懐疑的な見方も、保険会社の決断を先延ばしにさせています」とウェーバーは言い添えています。
レポートでは、他にも次のような分析結果を示しています。
• BPO契約には、システム関連サービス(保険契約管理システムのホスティング、保険会社のシステムの全面的な管理など)が盛り込まれるケースが多い。
• 保険会社がBPO契約の対象とする業務は限定されがちである。
• 保険金請求の管理や査定など主にBPOの対象となる業務では、TPA(Third Party Administrators,第三者管理者)が「陰の」プロバイダーとして新興競合業者を支配している。
当レポートは、今回取り上げたBPOプロバイダーのうちComputer Sciences Corporationを、スタッフと実績の両面で業界トップクラスでとし、同社を北米の保険会社向けBPOサービスプロバイダーのリーダー的存在として明確に位置づけています。同社はまた、BPO契約内容の評価基準としたBPOに関する8つのメタ・プロセスのうち7部門で最高の評価を得ています。当レポートは、EDS、ACS、IBMおよびFirst Notice Systemsも現在市場において確かなプレゼンスを確立していると認めています。
注)米ドルから日本円への換算レートは、2004年7月30日の仲値(東京三菱銀行公表による)を参照