2004年保険会社CIO/CTO調査: IT投資におけるプレッシャー、プライオリティ、プラン、プロジェクト
Abstract
(このレポートは2005年1月19日に"Insurance CIO/CTO Pressures, Priorities, Projects, and Plans: 2004 Survey Results"というタイトルで英文で発表されましたが、和訳版を2005年3月11日に発行しました。)
セレントは、米保険会社IT部門の幹部を対象に2度目となる年次調査を実施しました。その結果、業績拡大のサポートを重視する傾向が強まり、ウェブサービスの利用が増加すると同時に、ベンダーシステムの「購入または自社開発」という選択から「自社開発」に傾く動きが認められました。
セレントは2004年秋に米保険会社IT部門の幹部27人を対象に、優先課題、投資動向、プロジェクト、インフラなどに関する詳細な調査を行ないました。調査対象としたのはすべて年間保険料収入が1億ドル(約104億円)以上の保険会社で、回答者の大部分はCIOクラスの担当者です。2003年の調査結果と比較すると、回答者の関心がコスト削減から収益性と業績拡大をサポートするプロジェクトへとシフトしていることがわかります。各社のIT予算額は昨年比ほぼ横ばいで縮小傾向に歯止めがかかり、各CIOのより前向きな姿勢がうかがえます。また、投資利益(ROI)の実現期間を以前より長めに設定する体力もわずかながら付いてきました。
「保険業界は、IT投資に関して積極的な態度を少しずつ見せ始めています。投資額の増加はなお小幅にとどまっているものの、これまでにない前向きな気配がうかがえます。もはやコスト抑制一辺倒ではありません」 と、セレントの保険グループマネージャーで今回の調査結果をレポートにまとめたマシュー・ジョセフォウィッツは述べています。
2005年のIT投資の焦点として、生保・損保ともに回答が多かったのは保険契約管理システム(Policy Administration System)でした。その他に注目度が高かったのは、eビジネス/販売システム、損保のデータマスタリーシステム、生保のコンプライアンスおよび商品開発システムなどです。昨年の調査と同様、レポートでは、調査対象会社が現在進めている優先プロジェクトを20以上のカテゴリーに分類してリストアップしています。
予想外だったのは、システムの「購入」か「自社開発」という選択肢に関して、多くのプロジェクトで「自社開発」を選ぶ傾向が再び強まりつつあることです。「今回の調査に対する回答者の意見を集約すると、『十分な機能を備えた市販システムがあるはずだ』とする従来のコンセンサスから『ベンダーソリューションでは対応しきれない』とするスタンスにシフトしていることがわかります。これは、コスト削減圧力がやや弱まったことにも関連しているのかもしれません。いずれにしても、ベンダー側はマーケティング戦略や市場でのポジショニングを見直す必要があるでしょう。場合によっては商品開発の見直しにも取り組まざるを得ないでしょう」とジョセフォウィッツはコメントしています。
レポートでは、IT投資動向を決定付ける主なビジネストレンド、保険会社の平均的なIT予算内訳とITインフラ構成、ウェブサービスの利用状況、全社規模によるデータモデル構築の重要性、ACORD XMLをはじめとするデータ標準の採用状況、J2EEや.NETといった技術規格の認知状況、ITアウトソーシングの利用実態などについても詳しく論じています。
本レポートは全50ページから成り、調査の回答をまとめた36の図を掲載しています。
注)米ドルから日本円への換算レートは、2004年12月30日の仲値(東京三菱銀行公表による)を参照。