トランザクション・バンキングにおけるWin-Winの機会の創出: 企業からの需要と銀行による供給のギャップを埋める機会
Abstract
利ざやの縮小と熾烈なテクノロジー競争に直面する中、コーポレートバンキング部門では賢明な投資判断を下す必要がある。セレントは、銀行と企業顧客への調査から得たインサイトを分析し、銀行の賢明な判断に役立つ重要ポイントをまとめて紹介する。
トランザクションバンキングにおいてウィンウィンの機会を創出することが不可欠になっている。ウィンウィンとは、銀行によるサービスの「供給」と、企業からの「需要」を一致させることである。銀行にとってのウィンは、企業のニーズに対する理解を深め、そのニーズに応えることで、新たな収益源を生成するというメリットを得ることである。一方企業のウィンは、業務効率の改善と意思決定の向上で銀行から支援を受けることである。こうしたウィンウィンの機会を特定するために、セレントは銀行のトランザクションバンキング部門とその企業顧客を対象に世界規模の調査を行い、結果を分析した。その結果、企業からの需要と銀行による供給のギャップを埋める機会が多数あることが分かった。しかし、こうした機会は脅威でもあり、銀行がこのギャップを埋めなければ、企業はノンバンクも含めて新たなパートナーを探すだろう。
重要ポイントは以下の通り。
銀行が機会を獲得し、疲弊するリスクを回避することで、事態は好転する。 • 企業の35%が、最も重要な重点分野の1つとして、銀行との関係の合理化を挙げている。 • 70%が、新たな銀行やノンバンクとのパートナー関係の構築を考えている。 |
銀行には、新しいサービスとバリュープロポジションを収益化する明確な機会がある。 • 企業の70%が、業務効率の改善を実現できるパートナーを求めている。 • 32%が、データ主導型のインサイトは最大の価値を実現するサービス拡充の1つであると考えている。 • したがって、意思決定を向上させるサービスに対価を支払う相対的な意欲も高い。(例えば、キャッシュ可視性の改善、リアルタイムのキャッシュ予測、マルチバンク・ダッシュボードなど) |
ウィンウィンの機会でリードしている銀行は少数にとどまっている。 • 42%が業務効率をサポートする商品・サービスを提供している。 • 44%が意思決定の向上を支援している。 |
先を見越して行動している銀行には大きな好機があるが、新規参入者からの脅威は現実化している。 • 企業の75%が、データ主導型のサービスを提供する新しいプロバイダーとの提携を計画している。 |
「業務効率の改善」と「意思決定の向上」という需要サイドの観点から企業との関係を構築することは、銀行にとって従来の商品中心の戦略からの劇的なパラダイムシフトである。 これらの分野のいずれか、または両方で秀でている銀行は、競争上の差別化を実現することができる。特に、「意思決定の向上」で成功するための絶好の機会がある。 • 銀行の52%が、トランザクションデータの主な用途はセキュリティ関連であると報告している。 • 新たな商品・サービスを開発するための出発点としてトランザクションデータを捉えている銀行は、10行中4行にも満たなかった。 |
セレントは、需要と供給のギャップを特定し、銀行が差別化を図り、新たな収益源を生み出すことができる機会について以下の表に具体的に示している。
更に、顧客の業務効率の改善(Goldman Sachs、RBC、Santander、Wells Fargo)と、顧客の意思決定の向上(Citi、DBS、J.P.Morgan、Sage) の8つの事例を紹介している。