2022年の証券業界のテクノロジーに関するインタビューに基づく調査:クラウド、メインフレーム、データ
Abstract
10年以上前の世界金融危機以降、証券業界は大混乱を経験してきた。規制、市場構造、ビジネスモデル、テクノロジーの変化を受け、金融業界は業務処理モデルの大規模な変革に着手した。テクノロジーイノベーション全般のペースは加速しているが、業務処理モデルをサポートするテクノロジーの変化のペースはそれほど変わっておらず、見方によってはむしろ鈍化しているように見える。
突如、在宅勤務に移行したことで、キャピタルマーケッツ業界全体でクラウド導入の取り組みが加速したが、レガシーなアプリケーションやアーキテクチャの最新化は依然として困難である。この動きは、データの価値が高まる中で生じたものだが、データを活用できるテクノロジーと機能を持つ企業に限られていた。
DTCCは、こうしたクラウド対応でデータ駆動型の世界に向けて自社の顧客がどのように準備しているのか知りたいと考え、一部の顧客のテクノロジー導入と将来の計画について2021年末から2022年初めにかけて広範な調査を行ってほしいとセレントに依頼した。DTCCの顧客は、将来の金融市場を再考・構築する上で重要な役割を果たしているため、証券業界全体のテクノロジーの進化に関する見通しを共有する上で、独自の立場にある。
本調査は、アナリストによるインタビューと、調査によるデータ収集という形式で行われた。セレントは、北米の19社の金融機関でテクノロジーおよびオペレーション部門に所属するシニアエグゼクティブリーダー28名から話を聞いた。この広範なアウトリーチに、セレントの独自調査と専門知識を加えたことで、4つの重点分野における証券業界のITの現状と将来の状況が具体的になっている。多くの場合、テクノロジーとビジネスの両方の要因から(各社の顧客が変更に適応するための準備状況も含まれる)、新しいテクノロジーの採用と活用計画は、レガシーなアプローチを維持する必要があるという現実的な問題との間でバランスがとられている。本レポートでは、このバランスがどのようにとられているのか検証する。
主な調査結果:
- クラウドの採用は、程度の差はあるものの、ほぼ世界的に進んでおり、AWSとMS Azureがそれぞれ市場シェアとプライマリープロバイダーの地位において明確にリードしている。
- 調査の全参加者の50%近くが「クラウドリーダー」に分類された。
- クラウド導入のドライバートップ3は、ビジネスのアジリティ向上、業務効率の向上、セキュリティとレジリエンスの向上である。
- 調査参加者のほとんどが統合的アプローチをとってクラウドを採用していた。
- メインフレームは依然として各社の中核的な処理をサポートしていることから、これがなくなる可能性は低い。
- 最新のデータ交換方法への完全な移行は、事実上手詰まり状態にある。
- データ交換は、依然として手作業やバッチベースのアプローチから抜け出せずにいるが、今後2年間でデータマーケットプレイスやDLT、APIが主流になると予想される。
- 真の変革に向けたビジネスケースを構築するには、業界横断的な協調が必要になる。
- ほとんどの企業は、人工知能(AI)や機械学習(ML)を活用する力が相対的に未熟であると考えている。
- 現在、AIやMLの開発に割り当てられている企業のIT予算はごく一部 (1~5%) にとどまっている。
本レポートが対象としている企業
本レポートでは、米国とカナダのキャピタルマーケッツで活動している金融機関 (証券会社や投資運用会社) のテクノロジー導入に関する一般的な見解や戦略に関して実施された一次調査および二次調査の結果を紹介している。調査では、クラウド、メインフレームの最新化、およびデータトピックス (データ交換メカニズム/データ管理、AI/MLなど) に焦点を当てている。本レポートは、以下の担当者のニーズに対応するものである。
- CIO:長期的なテクノロジーの戦略、ビジョン、開発、メンテナンスを担当する最高情報責任者およびシニアスタッフ。
- CISO:ITリスクや、ビジネスに影響を及ぼすその他のセキュリティリスクの評価を担当する最高情報セキュリティ責任者。
- CRO:コンプライアンスリスク、業務リスク、財務リスク、資産リスク、およびその他のリスク管理を担当する最高リスク管理責任者。
- 各事業部門の責任者:収益創出および主要な証券サポート機能 (オペレーション業務など) を担当する事業部門の責任者。
調査参加者