損害保険料率算出システムのトレンド
Abstract
テクノロジーの進化に伴い損害保険料率算出プロセスが極めて複雑化する中、従来のテクノロジーではもはや算出システムとしての役割を果せなくなるかも知れません。
これまで、損害保険のリスク算出は比較的単純なプロセスとされてきました。しかし、競争圧力が強まるにつれ、算定上の要件は従来の保険料率算出ツールや手法では対応できなくなってきています。
「保険会社は業務の効率化、チャネル満足度の向上、収益性の改善を図るため、保険料率算出戦略の見直しを進めています。その結果、多くの保険会社が、新戦略をサポートするためのテクノロジーを導入する必要があると気づき始めています」と語るのは、セレントのシニアアナリストで最新レポート「損害保険料率算出システムのトレンド」を執筆したクレイグ・ウェーバーです。
ウェーバーによると、多くの保険会社が、長年使ってきたカスタム開発による保険料率算出ソリューションの見直しに入っており、既存の枠にとらわれずにかなり改良された機能を提供するベンダー製ソリューションに好意的です。「ある程度のカスタマイゼーションは通常必要ですが、新ツールを導入することで、保険会社は保険料率算出システムの構築、保守、統合が容易になります」とウェーバーは述べています。
レポートでは、米保険会社の保険料率算出システムに対する投資額が2006年には8億米ドル(約930億円)に達するだろうと言及しています。その大部分は社内の人件費やカスタム開発に振り向けられる見通しですが、外部のソフトウェアベンダーやコンサルタントに支払う費用も3億米ドル(約350億円)以上になるでしょう。
またレポートでは、分析の結果、以下のような主要トレンドを導き出しています。
- カスタム開発によるシステムの有効性には、明らかに問題が示されているが、多くの保険会社は当面はこれらに頼る状況が続くだろう
- 保険料率算出システムの開発・保守において、ユーザーが業務のことで担う役割が増しているのに対し、IT面の役割はやや低下している
- ウェブサービスやSOAを採用することで、保険料率算出機能の動作域が広がり、代替データソースの利用が促進されている
- 保険会社は、社内の判断材料をもとに価格設定を行う傾向を強めている
- 長期的には、上位保険会社以外の保険会社にとっても、保険料率の微細化は普通の手法となるだろう
本レポートと同時発行される「損害保険料率算出エンジンベンダー」では、この分野の有力ベンダーに関する詳細な分析を提供しています。取り上げたベンダーは、CGI、Computer Sciences Corporation、Decision Research Corporation, Duck Creek Technologies、IDP、Insurity、ISO、OneShield、Rackley Solutions、Insbridge/Skywire Software、Steel Card、The Innovation Group、Trilogyの13社です。
注)米ドルから日本円への換算レートは、2005年10月31日の仲値(東京三菱銀行公表による)を参照。