クラウドに移行する金融市場インフラ企業のための新しいTCOフレームワーク
Abstract
ビジネスモデルが変化し、競争圧力が高まる中、金融市場インフラ (FMI) 企業は、イノベーションの促進、ビジネスモデルの変革、戦略的な選択性のサポートを可能にするクラウドテクノロジーについて検討する際に、ビジネス戦略を再評価し、クラウドが果たす役割を熟考している。新しい戦略ではクラウド導入に向けた新しいアプローチが必要だが、FMI企業は現状維持バイアスを克服できず、そのために成長軌道が妨げられる可能性がある。
セレントの調査により、クラウド運用モデルの採用には、経営幹部レベルおよび取締役レベルの支持が必要であることが明らかになった。この一次調査では、オンプレミスとクラウドのコストを比較する際、従来の総保有コスト (TCO) という枠組みではFMI企業固有のニーズに適切に対応できないケースがあることが示された。無形コストを考慮し、機会コストをより適切に把握するためには、FMI企業に特化した新しいTCOフレームワークが必要である。
企業がビジネスプランを立案して経営陣の支持を取り付けるために採用する一般的なアプローチとして、既存のインフラのTCOを計算し、クラウドのTCOと比較するという方法がある。しかし、大半の企業とは異なり、FMI企業のテクノロジー資産には、個別のビジネスユースケースに合わせて調整され高度に特殊化された機器が多数含まれており、それらはサンクコストが高く、規制による監督が厳しく、リスクやセキュリティ上のプレッシャーも大きい。そのため、FMI企業に必要不可欠なワークロードの一部では、標準的なTCOの計算方法では、クラウドへの移行によるコスト削減がほとんど、あるいは全く反映されない場合がある。
さらに重要なことに、標準的なTCOの計算方法では機会コストが必ずしも十分に考慮されていないことが今回の調査で明らかになった。したがって、FMI企業はこれらのコストが戦略遂行能力に与える影響を考慮する必要があるだろう。
セレントはクラウドの導入を検討するFMI企業に対し、計算の一部に機会コストが考慮される拡張型のTCOの計算方法とフレームワークを提案する。新しい乗数の 「StrategicFriction」は、テクノロジーがビジネスプランの遂行に及ぼす可能性がある影響を表すものである。このフレームワークは、ビジネスオーナーから入力データを収集し、それを使用してこの新しい乗数 (TCOを増減) を計算するよう設計されており、TCOの計算方法に新しい変数を計算するための枠組みである 「StrategicFriction」 が組み込まれている。
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