カウンターパーティ・リスクへの対応:CVA管理の最新トレンド、プラクティスおよびテクノロジー
Abstract
世界の金融機関によるカウンターパーティ・リスクおよび信用評価調整(CVA)管理システムへの投資額は2012年に8億5,000万ドル(約671億円)を超えるとみられ、その後も年率9.6%のペースで増加し続け、2015年には11億ドル(約868億円)に達すると予想されます。
先の金融危機をきっかけに、信用評価調整(CVA)とカウンターパーティ信用リスク(CCR)管理の戦略的な重要性に関心が集まっています。大手ブローカーの多くがCVAによる多額の損失を抱えるなど、CVAを導入している金融機関のほとんどは損益の変動を管理する上で大きな課題に直面しています。セレントの最新レポート「カウンターパーティ・リスクへの対応:CVA管理の最新トレンド、プラクティスおよびテクノロジー」は、様々な改善の取り組みにもかかわらず、こうした厳しい状況が続いていることを明らかにしています。しかし、CVA管理の業務慣行はその対象範囲や細部が大きく進歩しています。
セレントの予想によると、CVA管理に対する金融機関の投資額は大幅に増加する見通しです。背景には規制強化の流れや市況の激しい変化などがあり、資本市場に参加している多くの銀行では既にカウンターパーティ・リスクとCVAの管理が最重要課題となっています。特に、外部のCVA関連アプリケーション/コンポーネントに対する投資額は2012年の8億5,900万ドル(約678億円)から年率9.6%のペースで増加し、2015年には11億1,600万ドル(約881億円)に達する見通しです。その牽引役を果たしてきたのは自己勘定取引を行う大手銀行で、今後も引き続き先頭に立つとみられますが、業務拡大を進めている地方の金融機関も基盤となるテクノロジーインフラを更新するなど、これに追随する動きをみせています。
「証券会社、マーケットメーカー、金融機関のキャピタルマーケット部門などは、この先数年にわたり様々な逆風にさらされるでしょう。とりわけ銀行は資本コストや資金調達コストの上昇、固定費および諸経費の増加、不透明な経済見通しなどに直面しています」と、セレントのリサーチディレクターで本レポートを執筆したキュビラス・ディンは述べています。
バーゼルⅢやドッド・フランク法による中央清算機関の利用義務付けといった当初の規制ルールが施行された今、自己勘定取引を行う銀行が全社規模で対応に取り組み、価格設定やカウンターパーティ・リスク管理に関するCVAの業務慣行が急速に進化することで、業界内では第2、第3のシステムを発注する動きが広がり、それがバイサイドやエンド・ユーザーである事業法人などにも波及すると予想されます。自己勘定取引を行う銀行は、フロントオフィスにCVAの価格決定機能や資金調達評価調整(FVA)機能を組み入れるための投資を惜しまない構えをみせているものの、CVAの価格決定に関する業務慣行や手法は金融機関によって異なっているのが現状です。こうした違いがあるため、バイサイドや事業法人などの潜在顧客の間では「豊富な品ぞろえ」を求めるようになっています。第2、第3のシステムを発注するにあたり、金融機関は急速な変化に対応できる高度な意思決定サポート機能およびインフラを求めるようになるでしょう。
本レポートは同様のテーマに関する一連のレポートの1つで、カウンターパーティ・リスクとCVA管理の最新トレンドや投資促進要因のほか、それらがテクノロジー戦略に及ぼす影響を分析しています。また、業界全体の動向や現在市場に投入されているCVAソリューションの特徴も紹介しています。
注)ドルから日本円への換算レートは、2012年5月31日の仲値(三菱東京UFJ銀行公表による)を参照。