2023年 欧州のコーポレートバンキングにおけるITの優先順位と戦略
2023/09/01
オープンバンキングを採用して現代化の課題と闘う
Abstract
世界経済は新型コロナのパンデミックによる影響とそれに伴う景気悪化や銀行業界の問題を切り抜け、コーポレートバンキングのIT支出は大きく増加し続けている。しかし、欧州各国のIT予算の傾向には明らかな違いがあり、IT予算が大幅に増加し続けている国もあれば、ほとんど増加していない国もある。これはタイミングの問題かもしれないが、予算の増加要因と優先項目を見ると、別の理由も浮かび上がってくる。
コーポレートバンキング業界の戦略的および商品レベルにおけるテクノロジーの優先事項を明らかにするために、セレントは再びテクノロジーのインサイトと戦略に関する調査を実施した。セレントは世界のコーポレートバンキング業界のシニアエグゼクティブ214名からインサイトと見解を収集し、今後のITの優先事項の上位項目、および最も大きな変化が予想される商品とプロセスについて詳細な情報を得た。本レポートでは、欧州コーポレートバンキングのエグゼクティブ85名からの回答を分析した。
主な調査結果:
- 欧州のIT予算の伸びは世界平均をわずかに下回る状況が続いており、2022年は世界平均の2.6%に対して2.4%、2023年は世界平均の4.2%に対して3.9%、2024年は世界平均の5.6%に対して5.3%となっている。しかし、国別で見ると、数字は各国で大きく異なっている。スペインの2023年のIT予算は0.6%増にとどまっているが、それ以外の欧州諸国は6.0%増、オランダは5.2%増となっている。2024年については、スペインは2.1%増に改善するが、他の欧州諸国とオランダはそれぞれ7.3%増と8.0%増に加速している。
- 欧州全体では、銀行は「銀行の変革」に向けた取り組みに予算の48%を投じているが、これは世界平均の49%をわずかに下回る水準である。この数字についても、国別で見ると各国で明らかな差があり、スペインの60%に対し、オランダは37%となっている。小規模な銀行は、「銀行の運営」コストの割合が高い大手銀行に比べ、成長のために配分される予算の割合が大きい。
- 投資を押し上げている大きな要因として、コンプライアンスと規制、スピードとアジリティ、レガシープラットフォームの最新化という3つが挙げられている。これらは世界的なトレンドと一致している。しかし、小規模な銀行では世界のトレンドとは異なる傾向が見られ、商品のイノベーションは要因の第3位にとどまっている。これは、商品のイノベーションが優先事項ではないことを意味しているわけではなく、規制やコンプライアンスといった外的な要因によって予算が影響を受け続けていることを示している。
- 回答した銀行の36%がテクノロジー面の優先事項としてプロセスの自動化を挙げており、最優先事項と累積された優先事項の両方で第1位となっている。36%という数字は、優先度が高くないというよりも、欧州の銀行があらゆる項目を優先事項と考えていることを示している。全17項目のうち、欧州の銀行が優先事項に選択したのは16項目で、15項目が優先事項の第1位にランクされた。
- 事業と商品の優先事項では明確な傾向が示され、デジタルチャネル (オンライン、モバイル、APIを含む) を挙げた銀行が47%と最も多く、エンベデッドファイナンスの45%がこれに続いた。