自動車事故記録装置とテレマティクスは保険会社にどのような未来をもたらすか?
Abstract
イベントデータ・レコーディング(自動車事故データ記録装置)やテレマティクスといった新しいテクノロジーは、自動車保険ビジネスの収益性向上に寄与する可能性があります。世界の保険会社の間では商品開発、保険金請求、リスク管理などに革新的なプログラムを導入する動きが広まっており、車載記録装置のビジネスケースを慎重に検証する必要があるでしょう。
欧州と北米を合わせた自動車保有台数は推計5億台に上り、先進国の自動車保険市場は巨大マーケットです。しかし、多くの保険会社は利益が安定していません。イベントデータ・レコーディング、テレマティクス、車載ビデオ録画装置といったテクノロジーの開発により、ドライバーの行動はかつてないレベルまで解析できるようになってきました。こうした状況は、情報量の多さが競争力の高さにつながる保険業界に多大な影響を与えています。セレントの最新レポート「自動車事故記録装置とテレマティクスは保険会社にどのような未来をもたらすか?」は、こうした最新車載テクノロジーを現在誰がどのように利用しているかを明らかにし、またこれらの普及を阻害または促進する要因について分析しています。
現在、市場には多種多様な装置が存在し、保険会社は収集する情報の精度をどこまでも上げられるようになっています。例えば、自動車の位置情報、スピード、運転時間をモニターしたり、急ブレーキといった特定のイベントデータを収集したりすることが可能です。基礎データとリスク評価機能の精度を向上させることで、保険会社は従来ならば保険対象外であった顧客層をターゲットとした新しいタイプの商品を投入できるようになりました。車載装置で収集した情報は保険金請求プロセスでも利用できます。しかし、こうしたテクノロジーの普及を妨げる要因も多く、特に大きな障害となっているのはユビキタス・ビジネスに伴うコストの問題です。
保険会社が車載装置によるデータ収集を行う方法はいくつかありますが、それぞれ付随的な問題を抱えています。「こうしたテクノロジーの採用に積極的なのは商用車向け保険を手がける保険会社に限られ、個人向け自動車保険の分野では、少数顧客層をターゲットとしたニッチ商品での普及にとどまるでしょう」とセレント保険プラクティスのシニアアナリストでレポート執筆者のキャサリン・スタッグ・マーシーは述べています。
世界中の保険会社において、革新的な自動車保険プログラムはいまだ初期段階にあります。「その普及に関しては、地域ごとの状況が大きな影響を及ぼします。EUの『eCall』プログラム(車両緊急通報システム)では、緊急時に通報するための車載テレマティクスが必要となるため、保険を含む他の分野でも無線GPSの採用が広がるでしょう。米国ではこうした国家規模のプロジェクトがないことから、ブラック・ボックスやイベントデータ・レコーディングにより高い関心が集まるでしょう」とセレントのアナリストでレポートの共同執筆者であるアシュレー・エバンズは述べています。
本レポートは北米、欧州およびアジアのケーススタディを掲載しています。また、レポートで取り上げた保険会社はProgressive、UNIQA、あいおい損害保険、Hibernian、ベンダーはSciencesとDriveCamです。
本レポートは6図と2表を含む23ページで構成されています。