オープンイノベーションプラットフォームへの道:日銀ネットの有効活用【日本語】
Abstract
日本銀行金融ネットワークシステム(通称「日銀ネット」)は、金融機関等が日本銀行に保有している当座預金(日銀当座預金)間の資金の受払や、国債の受渡をオンライン処理により実現する、日銀と金融機関等のコンピュータ・ネットワークシステムです。本稿では、日本の決済システムの中核たる「日銀ネット」を中心に、日本の決済システム、決済サービスのバックボーンとその有効活用への取り組みから、オープンイノベーションプラットフォームにつながる道筋を探ります。
KEY RESEARCH QUESTIONS | |
1 | 新日銀システムの狙いと特徴は何か? |
2 |
決済サービスを提供する大手金融機関に共通な課題とは? |
3 | オープンイノベーションプラットフォームに必要な要件は何か? |
金融市場インフラという制度や規制は競争条件であり、その制約を超えたディスラプティブな決済システムの創出には、一層の顧客目線が必要です。
金融市場インフラを支えるネットワークシステムは、2面性を持ちます。中央銀行や金融政策当局、業界団体などが運営する、資金決済システム、証券決済システムなどの市場インフラへの接続と、金融機関をはじめとした、金融サービス、決済サービスの提供事業者への接続です。日銀ネットのシステム更改の歴史は、市場インフラへの接続システム更改、つまり中央銀行の提供サービスの向上にあわせた、決済サービス事業者の対応でした。
「これまでのシステム更改は、常に、日本銀行のスケジュールにあわせ、金融機関は従たる立場で追随していったようにみえます。一方で、今回の新日銀ネット構築は、RTGS化に代表される決済リスク対策の一巡を経て、決済サービスのSTP化、証券インフラとの融合、グローバル化への対応を具体化する、ディスラプティブな決済システムの創出機会と言えます。つまり、これまでと主従関係が逆となり、決済サービスの提供事業者は、その先の決済サービスの利用者を睨んだ、能動的な対応が期待されているのです。」
「日本の決済サービスは、決済システムの頑健性と、利用者サービスの革新性という、二兎を追う時代に入っています。日銀ネットの発展とその有効活用を経て、金融市場インフラ接続の最適化と、その上での革新的な決済サービスを実現する、『オープンイノベーションプラットフォーム』が待望されます。」とアジア金融サービスグループのシニア・アナリストでレポートを執筆した柳川英一郎は述べています。