ビットコイン:マイニングをめぐるマイナーな矛盾点
2015/07/23
Abstract
ビットコインが誕生して間もなく7年目を迎えます。これまで取引に利用されてきた実績があるにもかかわらず、このテクノロジーの真のポテンシャルはいまだ不透明なままです。
KEY RESEARCH QUESTIONS | |
1 | ビットコインマイニングはビジネスモデルとして成り立つか? |
2 |
ビットコインは本質的に不安定なものか? |
3 | セレントのフィンテックの5大テーマにビットコインを当てはめるとどうなるか? |
レポートでは、現時点で暗号通貨の革命がどこまで進んでいるか、ビットコインマイニングの経済性を分析し、システムとしての効率性、課題、分散型システムへの新たなアプローチなどを明らかにしています。
ビットコインの成功は、ビットコインマイニングの成功に加え、この機能にリソースを効果的に配分できるか否かにかかっているといえるでしょう。一方、レポートではビットコインのプロトコルが本質的に変化しなければならなくなる可能性を示す以下のような矛盾点も指摘しています。
- マイニングによって、ビットコインのネットワーク内での安全な送金が可能になるが、現時点ではコストが非常に高く、金融リソースが無駄になる仕組みになっている。
- マイニングで獲得できるビットコインの数量は、4年ごとに半減している。そのため、ビットコインの価値が上がらない限り、数量の減少を相殺することはできず、マイニングによって得られる収益はゼロとなる。
- マイニングを行うためのインセンティブが低下すれば、マイニング能力が縮小され、マイニングのコストも低下する。その結果、「51%アタック」(通貨つぶし)に必要なコストが低下し、攻撃されるリスクが高まる。
- ビットコインの価値が上昇すれば、マイナーをマイニングプールに集める昨今の流れが続き、51%アタックの危険性が高まる。
- マイニングは高リスクビジネスである。ビットコインの価値が上昇していた2012~13年には高収益を上げていたが、その後価値が下落すると有名なマイナーが自己破綻に陥るケースも見られた。
- マイナーが信頼できない環境において「プルーフ・オブ・ワーク」システムを使った信頼できる方法でビットコインによる送金を行った場合、そのコストは出資者が負担する。その代わり、マイナーはビットコインネットワーク内での送金に対するは事実上の補助金を支払っている。
- ビットコインは分散型の自律的な組織であり、1人の人間または1つのグループが支配することはできない。従って、プロトコルを変更するためにはエコシステムを構成する様々な部分から幅広く同意を得る必要があり、簡単ではない。
「我々は、分散型システムが金融業界のイノベーションおよびディスラプションを急速に推進する原動力になる可能性があると確信しています。また、「ブロックチェーン」は想像を絶するようなイノベーションであると考えています。しかし、分散型システムとその影響について分析する中では、ビットコインを「ブロックチェーン2.0」やブロックチェーンを利用した新たなイノベーション(分散型の帳簿など)と対比して評価し、ビットコインの欠陥(マイニングやプルーフ・オブ・ワークなど)を指摘していくつもりです」とシニアアナリストでレポートを執筆したジョン・ドゥワイヤーは述べています。