CHATGPTをはじめとする大規模言語モデル (Part 2):ウェルスマネジメント編
次に来るものは?
Abstract
本レポートは、ChatGPTとその他の大規模言語モデルに関する2部構成のシリーズの第2弾である。初回レポート「CHATGPTをはじめとする大規模言語モデル:技術者でない人が知っておくべきこと」では、ITのバックグラウンドがない人でもChatGPT等のツールを利用できるAIテクノロジーについて説明した。「CHATGPTをはじめとする大規模言語モデル(PART 2):ウェルスマネジメント編」では、現在および将来のテクノロジー、ウェルスマネジメントのユースケース、デプロイ時の障害について詳説する。
大規模言語モデル (LLM) がウェルスマネジメント業界に変革をもたらす画期的な技術であることは明らかだ。しかし「変革をもたらす」ユースケースはまだ進化の途上である。多くのウェルスマネージャーがこのテクノロジーを活用する戦略を明言してはいるものの、「画期的な」アプリケーションを開発した企業はまだほとんどない。LLMを使用する人工知能 (AI) アプリケーションの多くは、電子メールの作成、ソーシャル投稿の作成、効率的なミーティング管理やドキュメント検索においてアドバイザーをサポートすることに重点が置かれている。役には立つかもしれないが、変革をもたらすものではない。
ウェルスマネージャーの課題は、効率性向上と顧客エンゲージメントの強化を実現できるよう、こうしたツールをアドバイザーのワークフロー内に配置することだろう。そのためには、ワークフローの合理化、規制・コンプライアンス要件の統合、ユースケースのガードレール作成、LLMがもたらすアウトプットの正確性と透明性の確保が必要となる。進展はしている。とはいえ真の成功は、LLMツールが重要なビジネス課題を解決し、アドバイザーに確かなメリットをもたらしてこそ実現するだろう。そうでなければ、アドバイザーのツールキットに入っている、使用されないままの気の利いたアプリの一つになってしまうだろう。
主な調査結果:
- ChatGPTなどの大規模言語モデル(LLM)は拡張知能ツールであり、人工知能(AI)と人間の知能を組み合わせることで、人間の能力を強化・増幅することが可能になる。例えば基本レベルであればコンテンツ生成や迅速な回答の取得、より高いレベルでは、意思決定、問題解決、および全体的な認知能力の向上が可能となる。
- 拡張知能を提供するツールは、変革をもたらす可能性、そして人による作業に付加価値をもたらす可能性がある。
- あらゆる職業において、「副操縦士」というビジョンは、もはや困難で壮大な計画ではない。ウェルスマネジメントにおいては、ある企業がGPTテクノロジーによるアドバイザーのためのオンデマンドCIOを構想している。
- LLMにより、組織はAIによって強化されうる従業員の能力要件を再評価するようになるだろう。
- コスト効率次第では、APIを介してLLMにアクセスする企業には、その規模にかかわらず対等な競争の場が与えられるだろう。
- アーリーアダプターらがビジネス強化に向け積極的に新しいユースケースを追求する中、何もしないでいるリスクはかなり大きいだろう。
- LLMを利用していない組織の業務効率は、LLMを使用している組織に比べ低くなるおそれがあり、これは長期的な課題や収益性の低下につながりかねない。
- 拡張知能ツールを採用するにあたっては、どの業界であっても未知の領域のマッピングと、企業の利害関係者や規制当局間の幅広い連携が必要となる。
- GPT-4をはじめとするLLMに関する報道が多いことから、これがウェルスマネジメント企業へのAI導入における最適な方法だとの考えも出てくるだろう。また、Broadridge、FMG、Morgan Stanley、Orionなどのアーリーアダプターらは強固な導入事例をつくってきた。しかしLLMに伴う固有のリスクを考えると、各企業は一歩引いて選択肢を検討する必要があるとセレントは考える。多くのウェルスマネージャーにとってベストなアプローチは「様子をうかがう」ことかもしれない。
- また、市場には投資に適したAIソリューションが他にもある。