テクノロジーが革新する資本市場プラットフォーム【日本語】
2023/03/23
ポストパンデミックの日本市場と市場参加者の取り組み
Abstract
セレントは、「資本市場における次世代テクノロジーの動向」を把握するため、金融機関、ITベンダーを対象にオンラインサーベイと個別インタビューを継続的に実施している。2022年秋に実施した「セレントサーベイ:テクノロジーが革新する日本の資本市場プラットフォーム」においては、50を超える金融サービスとITのプロフェッショナルが参加した。本稿はその概要と分析結果である。
ITイニシアチブの変化
- 成長戦略とテクノロジーの役割: 想像以上に、パンデミックの前後でITイニシアチブは変化した。2019年にはバックオフィスが最優先(45%)、フロントオフィス(24%)、顧客関係(21%)を大きく引き離していた。2022年、ITイニシアチブの優先順位は変わった。フロントオフィスが最優先(33%)、顧客関係(28%)、バックオフィス(28%)が続いた。市場参加者はパンデミック対応を乗り越え、成長戦略とそこでのテクノロジーの役割をバックオフィス中心からフロント及び顧客対応へと変化させている。
- 取り組みと課題:トレーディングテクノロジーアーキテクチャの革新を通じて克服を計画した課題は、2019年にはビジネスラインの再構築が最優先(27%)、コストカット(22%)、規制対応(22%)が続いた。2022年、IT及びオペレーション効率の改善が最優先(26%)、規制対応(21%)、顧客経験(21%)が続いた。市場参加者はパンデミックの経験から、オペレーションの効率化と顧客経験の改善に優先課題認識を変化させた。
- 変化の兆し:市場参加者にとってITリソースの調達は一層の困難性に直面している。社内リソースの重要性は不変であるが前回から低減している(47%から38%へ)。既存ベンダーリソースの重要性増加(19%から25%)、アウトソーシング(6%から8%)、フィンテック(3%から6%)の微増とオーダーメイドリソース(SIやコンサル)の微減(6%から4%)は変化の兆しである。
制度改正対応の課題と優先事項
- 過去の制度改正対応の振り返り:過半数が、過去の制度改正対応における「株式T+2」(67%)、「国債T+1」(48%)について大きなインパクトと回答。システム改変、バックオフィス事務やシステムの体制に大きな影響を与えたとの指摘、プロセス短縮や効率化のための事務フローの改変を指摘する回答が相次いだ。一方で、不可避な制度改正対応に終始してきたとの回答が大半で、新制度を新たな事業機会と捉えた、新商品サービス企画開発への着手は限定的である。
- 今後の制度改正対応の課題と優先事項:過半数が、東証の延伸(67%)と現物売買システムの刷新(48%)について大きなインパクトを予想。加えて、米国株T+1への移行、証券コードへの英文字組入れについても回答者の3割強がインパクトを指摘。現在のところ、市場参加者にはこれらの新制度に関する知識や経験が十分備わっているとは言い難い。一方で、こうした制度改正対応を新たな事業機会として挑むリーダー企業の声も多数聴かれた。市場構造の変化に伴い、市場参加者の意識と取り組み姿勢は多様化している。